11月29日のNY金は上昇で取引を終了。NYコメックスの通常取引は前日比8.40ドル高の1763.70ドルで終了した。ちょうどActive-month(中心限月)が12月から2月物に移行した関係で、水準が少し切り上がっている(理論上は金利分)。次なる移動平均線は200日線で、現時点で1804ドル近辺に位置している。それを超えると、見える景色も変わりそうだ。1800は心理的な節目でもあり、かなり売りが控えるだろう。
昨夜29日のNY市場は、翌30日のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長のパネル討論登壇や同じ日に発表が予定されている地区連銀経済報告(ベージュブック)また7~9月期GDP改定値の発表を控え、いわば空白の1日という印象で静かな展開だった。
主な経済発表もなく、前日に市場材料となった中国での広範囲の抗議行動も沈静化。一方で、前日にはFRB高官による利上げ継続を示唆するタカ派発言を手がかりとして盛り上がったドル買いも、早くも勢いを失い市場全般に方向感の乏しい1日だった。
中国の衛生当局は29日、新型コロナの防疫措置に関する記者会見を開き、高齢者へのワクチン接種強化や防疫措置の微調整を継続する方針を発表した。感染拡大の完全封じ込めをねらった「ゼロコロナ」政策への抗議活動が中国の主要都市で相次ぎ、中には体制批判の声も高まっていた。世界経済にも懸念材料と受け止められ、WTI原油価格が年初来安値を更新し、米国株安にもつながっていた。中国当局もさすがに警戒感を高めたとみられ、早くも市場の一部にはゼロコロナ政策の軌道修正を見込む動きも出ている。ただし中国での混乱はしばらく続くとの見方は多いし、その通りだろう。ゼロコロナの撤回は、政治体制的に難しいと思われる。中国の内側で不満のマグマがさらに溜まることになりそうだ。
各所で取り上げられているようにパウエルFRB議長は、本日ブルッキング研究所主催の経済と労働市場に関する討論会に参加する。12月13~14日に連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、来週からFRB関係者が発言を控えるブラックアウト期間入りすることから、最後の議長発言の機会になる。現地の午後、日本時間では明朝3時半頃には発言内容が伝えられると思われるが、少しずれて午前4時くらいかも。
28日にはNY連銀のウィリアムズ総裁とセントルイス連銀のブラード総裁がともにインフレ抑制に向けて一段の利上げ余地があるとの見方を示したこともあり、市場では議長発言もタカ派姿勢を維持したものとなるとの見方が多いようだ。実際に、11月FOMC後の記者会見ではインフレ抑制はいまだ「道半ば」で、最終到達金利水準(ターミナルレート)見通しは9月会合時点より切り上がるとの見方を示した経緯がある。
FRB執行部は、利上げ不足で高インフレが継続する弊害(コスト)は、過剰な利上げによる景気への痛みの弊害(コスト)を上回ると見ているが、この辺りのスタンスに変化が見られるか否かが注目される。