6月13日のNY金は前日比11.10ドル安の3営業日続落で1958.60ドルで終了。FOMCの決定を翌日に控え、その政策判断にも影響を与える可能性のあったこの日発表の5月米消費者物価指数(CPI)は、無風で通過ということに。それでもNY金が売られたのは、FRBのタカ派スタンスに対する警戒感がある。
発表された5月CPIは、全体指数、(変動の大きい食品とエネルギーを除いた)コア指数(コアCPI)ともにおおむね市場予想と一致した。大方の予想通り利上げを見送るとの見方が強まったことで、発表直後には債券買いが優勢になり利回りは低下。NY金も買い優勢に転じ、一時1985.90ドルまで買われた。ただし、上値は重かった。
ここまでの米国景気の底堅さを背景に、FRBの目標(2%)の2倍を超える水準でコアインフレが高止まりするとの懸念は根強く、7月には利上げを再開するとの観測も意識された。
NY時間外のアジアからロンドンの時間帯は1970ドルを超えるプラス圏で推移してきたNY金だったが、CPI発表直後の上昇をすべて失う形で昼前にはマイナス圏に入り、水準を切り下げて推移し、そのまま終了した。
CPI総合指数は前年同月比4.0%上昇と2021年3月以来の低い伸びとなった。前月比では0.1%上昇とやはり前月の0.4%から減速した。市場予想は前年比4.1%上昇、前月比0.2%上昇となっていた。コアCPIは前月比上昇率が3カ月連続で0.4%に。前年比上昇率は5.3%で4月の5.5%から低下した。家賃は依然として高止まりしているほか、中古車やトラックの価格はさらに上昇しコアCPIは高止まりに。基調的インフレ圧力は根強く、FRBは今回の利上げは見送るもののタカ派スタンスは維持するとの見方につながる。
興味深いのは結果に対する市場間の反応の温度差で、インフレ鈍化を楽観する形で株式市場は13日まで続伸となった。ダウ平均は6日続伸で3万4212ドルと2月13日以来4カ月ぶりの高値に。ナスダック総合、S&P500種はともに4日続伸で、連日22年4月以来の高値を更新している。一方債券市場では、ここまでの利上げの累積効果により景気の下押し圧力が高まるとの見方が定着している。金市場は基調的なインフレのしぶとさに対するFRBのタカ派スタンス継続を警戒している。
日本時間明朝の記者会見(15日午前3時半スタート)では、パウエル議長はインフレ対処において勝利宣言は時期尚早との見解を繰り返すのだろう。
ただし、目先はともあれ全体を引いて見るならば、米国の利上げサイクルが終盤に差し掛かっているのは間違いないわけで、そうした見通しがNY金の底堅さとなって表れている。今回のFOMCで売られるならば、状況を見ながら押し目買いの機会になると思う。