3月28日のNY金価格は3営業日ぶりに反発。NYコメックスの通常取引は前日比19.70ドル高の1973.50ドルで取引を終了。27日ファースト・シチズンズがシリコンバレー銀行(SVB)の買収を正式に発表。銀行懸念が緩和する中、米国債利回りは先週24日に付けた6カ月ぶりの低水準から上昇する一方で、主要通貨に対しドルが弱含みに推移。ドル指数は前日の103ポイント台からは1ポイント1近く低下し、金は買われやすかった。
過度の金融システム不安の和らぎは、不安心理の高まりに伴って急増した中小銀行からの預金引き出しの一巡を意味するが、3月10日のSVB破綻により流れに変化が起きたのは間違いないと思われる。米金融当局もそして市場も今後金融の目詰まりが起きること(流動性悪化)への注意は怠れなくなっている。金市場の反発は、そうした現状を物語る。
今回の2000ドル突破後のひと休止という現状は、切り上げた水準に対する市場センチメントの追認待ちといったところで、ここまでのトレンドの一巡を表すものではないとみられる。一般的には切り上げた水準での「値固め」と表現されるもの。
金融システムという点では、この日SVBなどの破綻を受けて米上院銀行委員会の公聴会が開かれた。連邦預金保険公社(FDIC)のグルーエンバーグ総裁や、連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融監督担当)が出席した。バー副議長は、「SVBの破綻は、銀行システムの強靭性に向けた取り組みを前に進める必要性を浮き彫りにした」と証言。グルーエンバーグ総裁も「1000億ドル(約13兆円)を超える資産を抱える銀行が金融安定に及ぼし得る影響を明確に示した」と発言した。
背景にトランプ前政権時代に規制を緩和し、SVBなどの中堅・中小銀行は2019年以降、大銀行に比べ資本や流動性などの面で緩められていた基準の見直しがある。FRBは5月1日までに銀行規制・監督の見直し方針を公表する予定になっている。ただし、規制強化には共和党が反対しており、議論の行方は不透明。公聴会では、今回の銀行破綻について議員から金融当局の監督体制の不備について質問が集中したと伝えられている。