3月29日のNY金は反落となった。米銀破綻に端を発した金融システム不安がひとまず和らぐなかで、株式市場にも買いが広がり、相対的に安全資産とされる金には利益確定の売りが広がった。この日からNYコメックスでは指標となる取引が4月物から6月物に移行したことで、通常取引の終値は5.90ドル安の1984.50ドルとなった。
総じて静かな市場環境で、10年債は横ばいで推移し、利回りは前日とほぼ変わらずの3.573%で終了。ドルも対円では四半期末さらに日本の年度末という状況からやや値動きが大きくなったものの、他通貨に対しては、おおむね小幅に上昇となった。ドル指数も102ポイント台の範囲で小動きだった。株式市場市場は上昇したが、買いスタンスとしては「警戒しながらの強気(cautiously bullish)」という印象。
米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融監督担当)が、シリコンバレー銀行(SVB)破綻を巡る議会公聴会の2日目、下院金融サービス委員会に出席。引き続き事態の鎮静化に全力を挙げるとしたことも懸念をやわらげた。
2日目に証言でバー副議長は、SVBの破綻直前に起きた預金の流出が「今まで見たこともないような規模とスピードで起きた」として「私たち全員が信じられないほど不意を突かれた」と述べた。
実際に米連邦預金保険公社(FDIC)によると、SVBは2022年末時点で1754億ドル(約23兆円)の預金を保有。しかし、破綻前日の3月9日に420億ドルもの預金流出があったとされる。1日で4分の1が流出することに。さらに取り付けは進み、10日には1000億ドル規模の流出が見込まれたところで、当局の判断で事業継続を停止しFDICの管理下に入ったとされる。
確かにこの資金移動はかつてはなかった規模だろう。しかし、こうなると銀行における預金の存在は安定資産ではないことになるし、中小銀行ならずとも極端な場合、風聞ひとつで経営に大きく影響することになる。市場のパニックをどう抑えるかが当局の課題だが、その当局も今や問題を抱えている。
この日、バー副議長は、「銀行の経営陣が明らかに失敗し、監督者や規制システムも失敗した」と、責任の一端はFRB含む監督サイドにもあったことを認め、改善策を探っているとした。5月1日には、銀行監督・規制の方針が示される予定になっている。ただし、規制強化には議会共和党が反対している。
なお、パウエルFRB議長は29日、米連邦議会の議員らとの非公開の昼食会に参加。金融政策の方向性などについて説明したとされる。参加した議員の話として伝えられているのは、政策金利は今年、どこまで引き上げられるのかという質問に対し、議長は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)でのメンバー予測(年内の水準は中央値5.1%、あと1回の利上げを見込む)を指摘したとされる。