本日夕刻のニュースでフィリピンの海洋警察が南シナ海の南沙諸島付近で中国漁船を拿捕し、船長以下乗組員を逮捕したというものがあった。フィリピンが保護種と定めているウミガメを数十匹捕まえていたとされる。言うまでもなく、南沙諸島はフィリピンと中国が領有権を主張し合っているところ。これに対し、中国は同地域での中国の主権を主張し、漁船と船員の即時釈放を要求しているとされる。また現場の海域に尖閣諸島でおなじみの海警局の船舶を派遣したとされ、緊張が一気に高まっていると。
前日は、同じくベトナムと中国が領有権を主張している南シナ海で、中国側が石油掘削を行っている地域にベトナムが海軍の艦船を派遣。これに対し中国側も警備艇などの艦船を派遣し一触即発とはいかないまでも緊張が高まったようだ。しかし、掘削は続いていると見られる。
こうしたことを書くのは、ロシアがクリミア半島併合で見せた“既成事実”を作ってしまうやり方が、力を背景に横行しそうな状況が見えるからだ。領有権の主張と言うことであれば、“実効支配”という表現が相応しいだろう。ウクライナ問題に関しては、足元で東部の主要都市でのウクライナ治安部隊と親ロシア派の集団による衝突が関心事だが、すでに4月17日にまとまった事態の鎮静化に向けた4者(米欧ロ+ウクライナ)合意はなし崩しになった形だ。つまり合意は反故にされたわけだ。
そもそもウクライナは、1994年に米英とロシアの合意の上の「ブタペスト覚書」で核を放棄するかわりに独立と領土保全を約束された経緯がある。今回の出来事はその約束を反故にされたことになる。にもかかわらず米欧はチョロチョロと制裁を広げながら対応するばかりで、実質的には“これ以上の拡大を防ぐ”ことに汲々としているように見える。
外交的な話し合いの場で、しっかりと正当性を主張しないと、実効支配の追認は時間の経過とともに(長期化するほど)、それ自体が「安定した状況」と「法」はみなすことになるのではなかったか。法格言で「権利の上に眠る者は、これを保護せず」というものがある。ウクライナを巡る状況は、本来の国際法に則った処理の仕方をしないと(するのが難しいのはわかるが)、そのうち「力による支配」をどんどん進める輩がのさばることになりそうだ。
さて今夜は、イエレン議長の議会証言。日本時間の明朝となる。寝ます。