さて3月のFOMC議事要旨だが、5月のQT(資産縮小、量的引き締め)着手を織り込ませるとしてきたが、内容はそれ以上となった。
月に950億ドルを上限とすることでも合意したことが浮上。さらに直接的な売却ではなく自然減少を前提としていることから、償還までの期間が長いMBS(住宅ローン担保証券)の保有比率が高まる可能性があるため、資産圧縮が進んだ時点ではMBSの直接的な売却も検討するとしている。市場への売却は非常に影響が大きいと思われ、こうした時期がいつになるのかは、市場の大きな関心事となりそうだ。今回のQTについては、前回2017~19年よりも早いペースで実施することも想定されている。その他では、多くのメンバーが今後の会合で通常の倍となる50bpの利上げを1回か、それ以上実施する可能性に言及となっていた。
かなりの部分が前日のブレイナード理事の発言でカバーされていたことから、サプライズなしとの報道もあったが、それはそうだろう。かなりのタカ派的内容にも関わらず、ハト派の代表格ブレイナード理事が同じことを話したことがワンクッションとなり、目立って反応したのはナスダックくらいだった。米債もやはり前日の利回り急伸がいったんピークを付けたかのような動きになったが、10年債だけは強含んで上昇が続いた。他は2年債含め、利回りは低下した。本日もこの傾向が続いており、10年債は強含みでここまでのところ一時6.230%迄上昇している。
問題は、一昨日、議事要旨で5月のQT導入などタカ派的内容が表面化すれば、金は「あく抜けということで、逆に値動きはしっかりするのではと思う」と書いたのだが、その金の動き。10年債利回りが6%台に上昇する中で逆行高で1930ドル台半ばまで水準を伸ばしている。終盤まで維持できるか否かが問われることになる。
何ゆえ、このような予測をするのか。それはFRBのタカ派化をいちはやく恐れ、価格に織り込む動きが進んでいたのが、金市場だと思うからだ。いまや、タカ派化を前提にした取引に移行している。その前提が名実ともに市場に認知される今回の議事要旨のようなイベントを通過すると、下値を固める展開に転じている。とは言え、一昨日のように10年債が3年ぶりの水準となる2.66%まで上がった際には、1916.20ドルまで売られた。それでも他の市場に比較して、底堅く推移していると言えると思う。本日は、米長期金利の利回り上昇にNY金がどこまで抗(あらが)うかが見ものだし、その一方で金と同じ弱みを持つナスダックがどうなるかも注目となる。