2月の米雇用統計は雇用者増加数が下振れどころか、昨年の月間平均値22万8000人をも上回る24万2000人の増加となった。市場予想は19~20万人となっていたので予想外の増加ということになる。米国景気に対する悲観的な見通しを吹き飛ばすような結果という受け止め方が広がった。
ただし、伝えられているように時間当たり賃金は低下していた。1月の雇用統計が雇用者増加数は予想を大きく下回ったものの、賃金増加を評価されたのとは逆のパターンとなった。もっとも、転職者が多い米国では5%割れは完全雇用状態とされ、この時点で10万人以上増加していれば問題なしという指摘もあるので、いまや雇用統計の注目点は、FRBの基準をクリアしていないインフレ率の上昇につながる賃金上昇ということになる。この残るワンピースは、今回もはまらなかった。しかし、一転して楽観ムードが漂い始めた市場では、それも時間の問題という捉え方が広がるとみられる。中国など外部要因にふたたび波乱がなければという条件付きではあるが。
いずれにしてもどこに重点を置いて見るかによって、評価も変わる雇用統計の結果に、金市場の反応は大きく揺れた。
発表前は下振れを予見するかのような買い優勢の展開となっていた金市場は、1270ドル台中盤まで高値を見ていた。しかし、さすがに発表時間が近づくと押し下げられ1260ドルほどで発表時間を迎えた。24万2000人増、4.9%のヘッドラインに対する反応は10ドルほどの急落だった。しかし、切り替えしも早かった。数分ほどで発表前の水準に戻ると、そのまま高値追いに転じ1265ドル突破。ここで少し売りをこなした後に戻り高値を更新しそのまま1280ドルまで駆け上がることになった。この間の安値は1250.10ドル、高値は1280.70ドル。さすがに売りものが出て1265ドルどころまで押し戻されるも、通常取引は1270.70ドルで終了。その後の時間外では売りが先行する流れに転じ1260ドルを少し割れる値位置、つまり前日の引け値近辺で終了という流れに。
目先のイベントを通過したことで、外部要因にも左右されるが来週は上値の重い展開で米利上げ観測の復活にともない反落も想定内という展開となりそうだ。