前週末6月7日の市場は、再び米利下げに関し楽観見通しの修正を求められることになった。
午前早くに発表された5月の米雇用統計にて雇用増が市場予想を大きく上振れ、賃金上昇も再加速し労働需給の底堅さを示した。
このブログでも「寄せては引く波のよう」と表現したことがあるが、前日まで盛り上がっていた米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ期待の波は、大部分が反転することになった。
年始以来何度も繰り返してきた、「振り出しに戻る」という印象の金(ゴールド)の反落となった。
週初から労働需給の緩和を示す経済指標の発表が相次ぎ、FRBが早ければ9月に利下げに踏み切るとの観測が強まっていた。それが5月中旬に見られたように、年内に利下げはない可能性まで指摘されることになった。
ただし前々週までの大方のFRB高官の発言から、次の一手は利下げという見方まで覆ったわけではない。それがゴールドの下値を支えており、循環的に下値が切り上がっていることに気付く展開が続いて来た。
5月雇用統計を受け金市場は、売りが膨らみNYコメックスの通常取引は前日比65.90ドル安の2325.00ドルで終了した。
もっとも7日の金市場は米雇用統計の発表前に売りが先行する軟調な展開となっていた。アジアのスタート時から2400ドル近辺の前日比プラス圏で推移し、午後には一時2406.70ドルまで付けていた。
流れが急変したのは、アジアの夕刻、ロンドン入りの時間帯。
中国人民銀行が毎月7日に(土日でも)定例発表する外貨準備統計にて、5月は金準備に変化が見られなかったことが判明。4月まで18カ月連続で増加していたが途絶えることになった。 この結果に反応し市場は売り優勢に転じ、2390ドル近辺から2360ドル近辺へ30ドルほど水準を切り下げた。その後、NY時間に入りさらに雇用統計に反応し節目の2350ドルを割れると、押し目買いを入れながらも、断続的な売りに押される形で水準を切り下げた。テクニカル指標の悪化も手伝い、通常取引終了後の時間外でも売りが続き、一時2304.20ドルまで付け、これが安値となった。結局、時間外取引は2311.10ドルで終了した。
7日の下げのきっかけを作った形の中国人民銀行による金準備増加が5月に止まった件だが、3月は5トン強、4月は2トン弱と減少傾向を示していたので、7日の金市場はやや過剰反応という印象。
前月には2トンを割っていたものの、7日であることが意識から外れており、何ゆえ下げているのかと思っていた。
このところアジア時間に中国のトレーダーと思われる買いや売りに目立った値動きが起きていたが、ロンドンの取引開始時間であったことから、他の材料を意識していたが、そうか!7日だったと。
中国人民銀行の買いはIMF届け出ベースで、ピーク時は1カ月で25トン以上増えていだったが、昨年11月以降は10トン前後で推移していた。3月以降の減少で中国人民銀行もさすがに価格急騰で購入量を減らしたかと見ていたが、5月はゼロということに。
しかし、これで金準備積み増しが終わったということではないとみられる。中央銀行の買いに関しては、IMF(国際通貨基金)のデータに現れぬ部分もあり読みにくい。
そもそも22年夏以降に中国の金輸入が急増したにも関わらず、人民銀行の持ち分に変化はなく、さりとて民間需要のデータに現れぬ行先のわからない金があった。このブログに、おそらく国有4大商業銀行が販売在庫として抱えており、そのうち人民銀行の持ち分として付け替えるのではないかと書いたと記憶している。ラジオ日経の番組などでも同様の話をしたと思う。