注目の3月の米CPI(消費者物価指数)はヘッドラインはインフレ加速。詳細を見ればインフレのピークアウトの兆しを感じさせるものとされた。
この日米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のインタビューに答えたブレイナードFRB理事は、「歓迎すべき」インフレ低下の兆候も見られていると発言したと伝えられた。 3月の米国は前半を中心に連日ガソリン価格の過去最高値更新がニュースになっていた。当然、インフレ加速を思わせた。内容はやはりと言うべきだろう、CPIはガソリン価格の大幅上昇を受け前月比で1.2%上昇と、2月の0.8%上昇から勢いを増し、2005年9月以来の大幅な伸びを記録した。前年同月比では8.5%の上昇で、前月の7.9%から加速し、1981年12月以来の高さとなった。市場予想の8.4%も上回った。
一方、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数(コアCPI)は、前年同月比では6.5%上昇と、こちらも前月の6.4%上昇から加速し、82年8月以来の高さとなった。
ただし、前月比では0.3%上昇と、2月の0.5%上昇から鈍化していた。
背景は中古車・トラックの価格が前月比で3.8%下落したこと。下落は2カ月連続。新型コロナ禍のサプライチェーン問題(供給障害)による中古車価格の値上がりが物価を押し上げてきた経緯があり、上昇が一段落し始めた兆候との捉え方がうまれた。ただし、前年比では依然35.3%の大幅高となっている。
果たしてこれがインフレのピークの兆しなのか。思うのは、さすがに8%を超える上昇が続かないであろうということ。したがって、この辺りがピークになっても不思議はない。しかし、高止まりするというのは多数意見だろうし、その通りだろう。
米国株はCPIのピークアウト観測を好感し上昇して始まった主要3指数だったが、そろって午後2時以降はマイナス圏に転じそのまま取引を終えた。くだんのブレイナード理事がインフレをFRB目標の2%に回帰させることがFRBの「最も重要な課題」と指摘し、早ければ6月にもバランスシート(保有資産)の縮小に着手する可能性があるとしたことを嫌気したとされる。ブレイナード発言は、先週のFOMC議事要旨公開の前日に、タカ派的なその内容の多くを講演で述べ、市場を冷やした経緯がある。ハト派の代表格だったが、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁やシカゴ連銀のエバンス総裁など他のハト派メンバーとともに方針を大転換せざるを得なくなったといえる。うがった見方をするならば、ブレイナード理事は、金融政策担当の副議長に指名されているものの、上院での承認手続きが遅れたまま時間が経過しており、この面からもインフレ抑制を強調する必要があるのかもしれない。ちなみにパウエル議長も正式には暫定議長として走っている。
さて2日分書くとすると、円建て金価格の過去最高値更新が続いている。ドル建て金が強張っているところに、調整を終えた円安の次の波がやって来たことで、8000円が指呼の間ということになってきた。・・・・・と書いてチェックしたらJPX大阪取引所の先物は8000円を先ほど突破している。金価格は円建てでなく、ドル建てで見るべしというのが信条だが、円建てが最高値を越えたからこれで終わりというわけではなく、あくまでドル建てが主導する。
そのNY金も昨日は、長期金利の上昇が一服となったことで1982.70ドルまで突っかけたあとブレイナード発言で1970ドルまで押し戻されていたが、再び強含みに推移している。何度も同じことを書くが、FRBによる強力な金融引き締めが、この先に控えているにも関わらず強含む金には、政策転換を織り込んだ上で、なお(織り込めそうで)織り込めないインフレの先行きやウクライナなど地政学要因をリスクと捉え、ヘッジ目的の買いが入っている。その表れが金ETFの残高増ということ。もちろん調整局面はある。しかし、8000円は通過点という解釈になる。