唐松の柱

2007年07月02日 | 信州の木材
唐松の続きである。長野県の唐松が建築材として注目をあびるようになったのは、平成8年長野県林業センターの研究員吉田孝久氏の高温乾燥による芯持ち柱の研究によるところが大であると思っている。
 その翌年の3月私は林業センターで彼の講演を聞き、出来上がった製品を見せてもらった。これは本当に画期的な研究なのだ。
 それまでの乾燥との違いは温度を110度から130度位の高温であるとのことであった。現在ではさらに研究が進んで温度ももう少し低い設定になっていると思う。

 唐松は大変強度のある木目の美しい木である、60年を過ぎると木が安定してくるが、それ以前だとそりやねじれやすいという特徴をもっている。
この短所がこの高温乾燥によってクリアできたのである。
それまでの乾燥機では大径木はよかったが、間伐材に多い中目材は土木用材になっても、建築材には向かないものと思われていたのだ。

 ちょうど事務所を新築する時だったので、強引にこの芯持ち柱を使うことを提案した。強引というのは、この柱は普通は見えないところに使うものなのだ。それを使うなら見せるようにということになったから、事務所のコンセプトが根本から変わってしまったからである。

 この柱を化粧柱としたことにより、床板も化粧梁も壁板も唐松である。壁は珪藻土、昔の小学校のイメージである。世はその頃から自然素材志向に流れていたので、一歩先をいけたとうれしかったものである。

 事務所の柱は吉田氏が研究の延長で乾燥してくれた。これを商品化しようとした私は、高温乾燥ができるという業者に依頼したが、帰ってきた600本の製品はそのほとんどは使い物にならなかった。これは乾燥機ではなくてそれを使いこなす人の問題だと解釈しあきらめた。林業センターの吉田さんに作ってもらっての商品化は無理だもんね。

 ここ佐久は唐松の産地である。同じ長野県の唐松といえども場所により違いがある。強度、色艶にかけてここは一番だと思う。冬寒いけれど雪が少ない(雪のコートを着ないから)ので目の詰んだ粘りのある木になるのだろう。

 今山林の主流は戦後植林された木である。昭和50年代、60年代の間伐の時期を経ていよいよの時期にきている。
吉田さんの高温乾燥の技術がどれほど長野県の唐松の用途拡大になったかわからない。

 1本でも多く市場に乗せたい。唐松と共に生きてきた私たちの願いである。
今でも間伐された木の80%近くは山に切捨て間伐という名のもとに放置されている現実を知ってほしい。
                           美恵子
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