Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

Joger

2011年09月09日 | バリ
私の友人たちは、このJogerの文字を見たとき、バリ芸能のJogedやJangerと書き間違えているのではないかと思ったのではなかろうか?ところがどっこい、Jogerで正しいのである。バリを訪れるほとんどの日本人観光客はJogerを知らないのだが、ジャワから来る観光客でJogerを知らない者はいないと言われる。それではJogerとは何ぞや?
 Jogerは、インドネシア国内に知られるバリのTシャツブランドである。今はTシャツだけでなく、帽子、カバンなどさまざまな物を出しているが、これはバリに二か所?しかないJoger製品直売店でしか買えないのである。
 さてこのJogerの大型店が、ブドゥグルへ向かう大きな道沿いにあるので、ムンドウック村に行く途中、物見遊山で寄ってみようということになった。「今のバリ」を知ることはバリ研究者として必要?である。というのもイスラム明けの大祭になると、この店どころか道路は大混雑し、店内は年末のアメヨコのようになってしまうからだ。
 大祭前とはいえ、インドネシア人観光客でごったがえし、Tシャツの売り場は、もう人々が手にとったTシャツが山のようになっていて、バーゲン会場のようだ。写真撮影は禁止なので写真はないのだが、70,000ルピアから110,000ルピアまでの膨大な種類のTシャツが売られている。ジャワ人にとって重要なのは、このJogerのロゴと、書かれている面白おかしいインドネシアの言葉らしい。
 一人Tシャツは12枚以内と決められている。ある人に言わせれば(ちょっと誇大表現だと思うが)、ジャワからの観光客がバリに行ってJogerのTシャツを買わないなんて「ありえない」そうだ。時には足りなくて、車の運転手にお金を渡して買わせるそうである。なんともすごいお土産屋だ。ちなみにS教授が購入したので、知人の方は「見た―い」とか「ねえ見せてー」とやさしく言ってみよう。講座に着てきてもらえるかもしれない。私の家は自身のTシャツ購入禁止令(2009)が出されているため(膨大な枚数があるため当然といえば、当然である)、記念にかわいいJogerのキーホルダーを7,500ルピアで購入した。ちなみにこのキーホルダーにもこんなインドネシア語が書かれている。
表面 Apakah Anda sudah tahu Joger?
裏面 Kalau sudah tahu, berarti pasti bukan tempe !
インドネシア語のわかる方、よく考えてみよう。(日本語に訳しても、これは面白くないので、インドネシアと無関係な読者の方々、ごめんなさい。)(9月1日に記す)(写真は後日)

ルロンゴラン

2011年09月09日 | バリ
 デンパサールから車で約2時間半走った山間部にあるムンドゥック村にこの数年通っている。若い頃ならバイクで行ったのだろうが、さすがにこの歳で急坂続きの道や雨が怖いので、車で行くことにしている。
 バリ北部では南部には見られないガムランのレパートリーが今なお演奏され続けている。その一つが《ルロンゴラン》と呼ばれる儀礼曲で、いくつかの村で伝承されているこれらの曲の基本構造は類似しているが、演奏方法や速度は大きく異なる。また寺院儀礼で演奏する村もあれば、個人の儀礼で演奏する村もある。
 私が最も好きな《ルロンゴラン》を演奏するのが、ムンドゥック村のグループで、とにかく早く、パワフルである。観客が圧倒される「すごみ」がある。太鼓の手は、今まで聞いたことのないような北部のクンダンの独特の手が用いられるし、装飾方法も南部と少しずつ異なっている。
 昨晩、ムンドゥッ村のグループは、自分たちの楽器ではなく、近くのバニュワティス村の楽器を使って演奏した。10月に香港でこの楽器を用いて演奏するのだが、その時のために慣れる必要があるらしい。ところがこの楽器、鍵盤一つ分、高いのである(今回の調査でもそれがよくわかった)。ムンドゥックの人々に言わせると、音の高い楽器に《ルロンゴラン》は合わないのだそうだ。演奏者たちはかなりのストレスらしいが、そのストレスを発散させるような「すごみ」はなお健在だった。クビャル(閃光)というガムランが、北部で誕生したのもこういう演奏を聞くとうなずけるのである。(8月30日に記す)(写真は後日)