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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ヒンドゥー、イスラム

2011年09月13日 | バリ
 カランガスムの王族の結婚式が行われ、そこにイスラムの集落から演奏グループが招待された。バリは基本的にヒンドゥー教なので、ヒンドゥー教の儀礼にイスラムの音楽が演奏されたことになる。
 カランガスム東部地域は、もともと東隣に位置するイスラムのロンボック島と政治的にも文化的にも深い関係を持っている。カランガスム王家が住むアムラプラには複数のイスラム集落が点在し、ヒンドゥー集落と入れ子のような位置関係になっている。古い時代から二つの宗教の人々は互いを尊重し、共存してきた。特に王族はイスラムの人々を大切した。またイスラムの人々もカランガスムの王家にさまざまな形で関わってきた。現在の王家の当主と話をしたが、王家の結婚式には必ずイスラム集落から音楽グループが招待され、そこで演奏をしてきたのだという。「この伝統を次の世代にも継承しなくてはならない。」と当主は語ってくれた。
 宗教対立はかつての第一世界と第二世界の対立に変わって、今や新たな民族間対立の引き金となった。民族対立や紛争を見てみれば、その多くが宗教対立であることは明白だ。しかし、少なくてもこのカランガスムのアムラプラでは、二つの宗教は当たり前のように存在している。バリ・ヒンドゥーの正装で演奏するイスラムの人々の服装は、彼らのヒンドゥーの人々に対する気遣いなのかもしれない。
 王家に招待された人々やガムラン奏者には、豚を中心としたバリの料理がふるまわれたが、イスラム集落の演奏者には、鶏肉やヤギのスープがはいった弁当がふるまわれた。私も今日はイスラムの音楽の調査だったことから、彼らと一緒にHALAL(イスラムが許可した)の弁当を食べた。食べているものは違っても、すべてが自然だった。祝福という「儀礼的行為」には宗教的な違いはあっても、その「心」には違いはないのだろう。(9月5日に記す)