徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

福参(ふくまいり)と和楽

2025-01-26 19:54:33 | 季節
 2月6日に斎行される「熊本城稲荷神社初午大祭」を前に、今日1月26日は恒例の「福迎え御神幸行列」が斎行された。献弊式に続き、宮司や今年の福男と福娘たちが「発輦(はつれん)!」の掛声も高らかに神社を出発、熊本市の中心街を練り歩き、商店を巡りながら「福拍子」で気勢を上げ、商売繁盛を祈願した。


熊本城稲荷神社から「福迎え御神幸行列」のご発輦


 「福迎え御神幸行列」のご発輦を見送った後、熊本市民会館へ移動し、筝演奏家の小路永和奈さんからご案内を受けていた「人づくり基金コンサートvol.6」を見に行く。小路永さんはお母様のこずえ様や自ら主宰のお箏教室の生徒さんたち、それに普段から交流のある演奏家の皆さんとのセッションで計6曲を演奏された。完成度の高い素晴らしい演奏会だったと思う。



演奏仲間とともに

草枕と民謡「田原坂」

2025-01-25 20:01:31 | 文芸
 僕の愛読書は夏目漱石の「草枕」と言っていいだろう。と言っても何度読んでもよくわからないところが多いので読み直す回数が多いと言った方が正しいかもしれない。それはともかく、「草枕」の魅力の一つは随所に長唄や民謡や謡曲などが散りばめられていることがあげられる。第二章にこんな一節がある。

--やがて長閑な馬子唄が、春に更けた空山一路の夢を破る。憐れの底に気楽な響がこもって、どう考えても画にかいた声だ。
   馬子唄の鈴鹿越ゆるや春の雨
と、今度は斜に書きつけたが、書いて見て、これは自分の句でないと気がついた。--

 この句自体はどうやら正岡子規の句をもじったものらしいが、「鈴鹿馬子唄」が聞こえてきた情景を描いている。ただ、馬子が本当に唄っていたのかどうかはわからない。第七章の「那古井の宿」の浴場で、子供の頃、酒屋の娘が「旅の衣は篠懸の…」と長唄「勧進帳」のお浚いをしていたことを回想する場面があるが、それと同じように「鈴鹿馬子唄」も過去の出来事の回想だったのかもしれない。歴史研究家で作家であり、漱石の孫娘婿でもあった半藤一利氏(2021年没)が「草枕は一種のファンタジー」とおっしゃるのも頷ける。

 ところで、熊本民謡「田原坂」は「雨は降る降る 人馬は濡れる 越すに越されぬ 田原坂」という歌詞から、「鈴鹿馬子唄」の「坂は照るてる 鈴鹿は曇る あいの土山雨がふる」や「箱根馬子唄」の「箱根八里は 馬でも越すが 越すに越されぬ大井川」という歌詞との類似性が指摘されることがある。「鈴鹿馬子唄」と「箱根馬子唄」ともに江戸時代から唄われていて、「田原坂」は明治10年の西南戦争後だいぶ経ってから作られた唄といわれているので、作者(不詳)は二つの馬子唄の影響を受けたことは大いに考えられる。ただ、民謡にはそういう例は多いらしい。


鳥越の峠の茶屋へ向かう道

舞 踊:植木町民謡田原坂保存会
 唄 :本條秀美
三味線:本條秀太郎

君が代松竹梅 ~梅のパート~

2025-01-24 18:29:36 | 古典芸能
 今から17年前、平成20年4月30日(水)の夜。熊本城二の丸広場特設ステージでは、「熊本城築城400年祭」のエピローグとして「坂東玉三郎 特別舞踊公演」が行われた。昼過ぎには1時間ほど並んで入場整理券を確保し、舞台から10列目ほどの席に母と家内と僕と三人並んで座っていた。何気なく後ろを振り返ると圧倒されそうな大観衆。翌日の新聞記事に観衆12,000人と書いてあった。舞台の向こうにはライトアップされた熊本城天守閣が浮かび上がっている。やがて舞台が暗転、地方の演奏が始まる。そしていよいよ坂東玉三郎さんの登場だ。場内の空気が一変する。あちこちで「ほ~ッ」というため息が漏れる。1曲目の「君が代松竹梅」を踊り始める。それから2曲目の「藤娘」が終り、玉三郎さんが退場するまでの間、僕は異次元空間にいるような気がした。

 先日、国際交流会館で行われた「第58回熊本県邦楽協会演奏会」の最終演目「君が代松竹梅」の演奏を聴きながら、僕は17年前の玉三郎さんの舞台を思い出していた。
 今日は先日の演奏会における「君が代松竹梅」の中から、最後の「梅のパート」を視聴した。


マイミックスリスト

2025-01-23 22:18:09 | 音楽芸能
 YouTubeの「マイミックスリスト」機能によりリストアップされたタイトルを時々チェックしている。ネット上には個人のお気に入りをまとめたものというような説明もあるが、自分でお気に入りに選んだ覚えはない。中には一度も再生したことがないものも含まれており、再生歴からAIで僕が好みそうなものを選んでいるのだろう。先日リストされていた下記の26タイトルの中から3タイトルを選んで視聴した。

  • 喜代節
  • 熊本民謡おてもやん
  • 鹿児島三下り~田助ハイヤ
  • After You've Gone - P Time Selection
  • 東海風流チャンネル「下田節」
  • ひえつき節(宮崎県民謡)
  • ザ・わらべ~さのさ~
  • 熊本自転車節(歌詞付)
  • 花童~肥後のタンタン節~
  • 花童~キンキラキン~
  • ザ・わらべ~津軽あいや節~
  • 伊勢音頭(歌詞付)
  • こわらべ~江津湖音頭~
  • 長崎浜節/長崎ぶらぶら節
  • 端唄 せつほんかいな
  • 牛深高校郷土芸能部 牛深ハイヤ節
  • 民謡「鹿児島小原良節」
  • 花童~絵日傘/数え唄~
  • 花童~小坪いかとり歌~
  • こわらべ~京ものがたり~
  • 新保広大寺~八木節
  • おてもやん 田中祥子
  • 東海風流チャンネル「碧南木遣節」
  • Clarinet Marmalade, Shotgun Jazz Band with Makiko Tamura
  • ざ・わらべ&こわらべ~河内音頭~
  • 豊浜須佐踊り

   ▼After You've Gone - P Time Selection

   ▼東海風流チャンネル「下田節」

   ▼ザ・わらべ~さのさ~


にっぽん縦断 こころ旅

2025-01-22 22:30:07 | テレビ
 「にっぽん縦断 こころ旅 2024秋 熊本編」2日目は玉名市から長洲町の「長洲港」を目指す。旅人は火野正平さんのピンチヒッター坂上忍さん。
 今から16年前、3歳の孫にカモメを見せようと夏休みに長洲港に連れて行ったものの、季節外れで渡り鳥のカモメはいなかったという女性の願いを叶えるため長洲港をめざす坂上さん。
 出発地点は玉名市小浜の菊池川右岸。菊池川堤防の道を下流方向へ自転車を走らせるのだが、この道は僕にとって思い出深い道。僕が幼い頃、高瀬駅(現玉名駅)から大浜町の母の生家までの約3kmを母に手を引かれてくてく歩いた道である。道沿いに木蝋生産の名残であるハゼ並木が続く。寛文年間から熊本藩ではハゼが特産品奨励として植栽されて木蝋生産が盛んに行われ、藩の財政を支えた。現在は木蝋生産は行われていないが、秋には美しく紅葉するハゼ並木が市民に親しまれている。
 ハゼ並木をしばらく走った後、右折して長洲へ向かう畦道に自転車を進める坂上さん一行。出会った住民たちと触れ合ったり、途中の食堂で昼食をとったりしながら長洲港に到着。驚くほどのカモメの群れに出会い、依頼者の手紙を読んで目的達成となった。
 そんな様子を見ながら、僕はなぜか海達公子の詩を思い出していた。


旅人は坂上忍さん


菊池川右岸のハゼ並木を進む


今日のコース


長洲港にはカモメが群れていた

▼海達公子の詩「川口」

懐かしい風景

2025-01-21 21:25:41 | テレビ
 テレビ番組の中で好きなジャンルが旅番組。見ていて行ったことがある町や風景が出てくるとなんだか嬉しくなる。
 今日見たのはNHK-BS「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」選と、BSテレ東「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」の2本。

 「六角精児の呑み鉄本線」は冬の野岩鉄道&会津鉄道だったが、ゴール地点の西会津に近づくと車窓から冠雪した会津磐梯山が美しい姿を見せる。磐梯山を初めて目にしたのは高校1年の会津若松国体の時だから、もう64年も前になる。その後、那須在勤の頃、会津若松を二度訪れていつも変わらぬ磐梯山の姿を拝んだものである。


会津磐梯山

 一方の「ローカル路線バスの旅」は女性3名で挑む新シリーズ。赤江珠緒・高城れに・三船美佳の3人が日光・中禅寺湖をスタートし3泊4日で千葉県房総半島最南端の野島埼灯台を目指す。
 僕は彼女らが通った鎌ヶ谷に悲しい想い出がある。東京本社に勤務していた40数年前、机を並べていた新入女子社員が心臓系疾患で突然死した。鎌ヶ谷から通勤していた彼女のご自宅でのお葬式にも参列した。無性に悲しかった出来事が想い出された。


左から三船美佳・高城れに・赤江珠緒の皆さん

     「六角精児の呑み鉄本線」のバックで流れていたライ・クーダーの「I Got Mine」

第58回熊本県邦楽協会演奏会

2025-01-19 20:28:33 | 古典芸能
 今日、国際交流会館で行われた「第58回熊本県邦楽協会演奏会」では毎回出演の蓑里会で立三味線を務められる杵屋五司郎さんが、初めて自らの出自や経歴について話をされ、杵屋をリードして行く立場となった現在の心境を語られた。また、寛永年間に杵屋勘五郎が兄の初代中村勘三郎とともに江戸に下り、杵屋宗家の始祖として江戸歌舞伎の発展に尽くした話など、とても興味深い話をされた。


【今日の演目】
  • 三曲「越後獅子」・・・・・・・・・琴古流尺八楽若菜会
  • 俚奏楽「蛍茶屋」・・・・・・・・・秀美会
  • 筝曲「千鳥の曲」・・・・・・・・・都山流尺八楽会
  • 長唄「連獅子」・・・・・・・・・・蓑里会
  • 琴古流尺八本曲「下り葉の曲」・・・琴古流尺八楽若菜会
  • 肥後琵琶「餅酒合戦」・・・・・・・肥後琵琶の会
  • 端唄「松づくし・春雨・寄りを戻して・品川甚句」・・・椿会
  • 都山流尺八本曲「平和の山河」・・・都山流尺八楽会
  • 長唄「君が代松竹梅」・・・・・・・花と誠の会・蓑里会

昨夜の夢 ~エルヴィス~

2025-01-18 22:20:21 | 
 昨夜、不思議な夢を見た。
 僕はどこかのホールで行われているライブコンサートを観に行っている。ステージでは一人の歌手が1本のギターを爪弾きながら歌っている。顔がハッキリとはわからないが、風体から見てエルヴィス・プレスリーのようだ。バラードなのだが不思議なことに日本語で歌っている。そして観客が彼の歌に合わせて合唱しているのだ。今まで聞いたことのないその歌を、あとで曲名を調べてみようと必死に耳コピーした。
 しかし、朝起きてみるとそのメロディは儚く消えていた。何でこんな夢を見たのだろうとしばらく布団の中で考えた。
 思い当たるのは先日、NHK-BSのプレミアムシネマでエルヴィス・プレスリーの伝記ドラマ「エルヴィス」をやっていた。僕が中高生の頃、エルヴィス主演の映画をよく観に行ったものだが、そのエルヴィスのイメージと、この映画でエルヴィスに扮している役者のイメージがあまりにも違うので途中で見るのをやめた。その後、前から気になっている、英語で演じられる能「青い月のメンフィス」(Blue Moon Over Memphis)のイントロダクションPVをYouTubeで見た。エルヴィスのファンにとって聖地となっているテネシー州メンフィスの、かつての邸宅グレイスランドを訪れた旅人の前にエルヴィスの霊が現れるという夢幻能である。おそらくそんな映像などが入り混じってわけのわからない夢になったのだろう。

 エルヴィスの主演作「ブルー・ハワイ」の中で歌う「好きにならずにいられない(Can't Help Falling In Love)」

 夢幻能「青い月のメンフィス(Blue Moon Over Memphis)」の紹介PV

梅の開花時期

2025-01-17 20:47:23 | 季節
 今日はもう1月17日。わが家の梅も護国神社の梅園の梅も、いまだに蕾の膨らむ気配すらない。今年は開花が遅いという話は聞いていたが、気になったので過年度のブログ記事を確認してみた。
 なんと昨年は護国神社の紅梅が1月13日にはほぼ開花と言っていい状態である。2015年のわが家の梅は1月14日にはだいぶ開いている。今年の状態はというと蕾が膨らみ始めるのはまだ1週間以上先と思われる。その年々の気候条件によって開花時期は左右されることはわかっているが、やはり梅の開花は「春のたより」。待ち遠しいものだ。
 そこで梅を季語とした漱石の句を二つ。いずれも漱石お得意の邦楽にちなんだ句。

   紅梅にあはれ琴ひく妹もがな(明治29年)

   紅梅や舞の地を弾く金之助(大正4年)


2015.1.14


2016.1.16


2019.1.20


2020.1.23


2021.1.19


2024.1.13

春のたより

2025-01-16 19:54:08 | 
 今日は朝から国立熊本病院へ。先日受けた消化器検査の結果を聞くためだったが、だいぶ待たされた挙句、結果が届いていないので来週再来院の指示。憮然たる思いで帰路につく。二の丸広場を通って帰ろうと「二の丸休み処」の前に差しかかると、中のモニターに、一昨年他界した同級生の顔がアップで映っていてビックリした。勇知之君といって、郷土史家で「西南の役」研究家として知られていた。誘われるように中に入りバンコに座って見た。西南戦争で証明された熊本城の堅固さを紹介するビデオ映像だった。勇君はその解説役として登場していた。しかし、「休み処」の客はほとんど外国人。ビデオには無関心のようだったが、勇君もきっとこの様子を見て苦笑していることだろう。
 頬が凍てつくような空気を感じながら二の丸広場を歩いたが、もう1,2週間も経てば護国神社の紅梅の開花のたよりが聞けるだろう。