徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

武士とメレンゲ

2011-06-29 16:57:01 | 水球
 熊本には肥後細川藩時代の1700年代の初め頃から始まったと言われる「小堀流踏水術」という古式泳法が今日まで受け継がれている。川や海など水の中でも戦える武術の一つとして始められたもので、泳法としては立ち泳ぎや抜き手、浮き身などがあるが、中でも基本中の基本は立ち泳ぎだ。この立ち泳ぎの技術は、水球やシンクロナイズド・スイミングの基礎技術である「巻き足」と全く同じである。水球という競技がイギリスで始められたのは1800年代の後半で、今日と同じような基礎技術が確立したのは1800年代の終わり頃といわれているから、立ち泳ぎの泳法を覚えたのは日本の方が200年ほど早かったわけだ。この立ち泳ぎのことを英語で「トレディング・ウォーター」、通称は「エッグ・ビーター」という。「エッグ・ビーター」というのは、もともとボウルに入れたなま卵をかき混ぜる、棒の先に針金が何本も丸められたあのお馴染みの調理器具のことだ。つまり、巻き足の足のまわし方が「エッグ・ビーター」で卵をかき混ぜる動作を連想させることから、こう呼ばれるようになったらしい。その昔、小堀流踏水術の修練に励んだお侍さんたちも、300年後、その武術をメレンゲづくりの道具のように呼ばれることになるとは思ってもみなかっただろう。