兵隊と死神/アーサー・ランサムのロシア昔話/神宮輝夫・訳/白水社/2009年初版
25年間でお役御免になった兵隊がもらったのは、かさかさのパン3つ。故郷へかえる旅で、三人のこじきにパンをあげることに。
しかし、三人目のこじきからもらったものは、誰が相手でもかならず勝つというトランプと、”入れ”というとなんでもはいる袋。
やがて、悪魔が住んでいて、誰も住む人がいない立派な宮殿に一晩とまっていいか王さまにたずねる。これまでも無鉄砲なものどもが誰も生きて戻らなかったという宮殿。
真夜中に悪魔があらわれ、トランプで勝負することに。
何度やっても兵隊の勝ちで、悪魔の金貨銀貨は兵隊のものになってしまう(金遣いのあらい男が千年つかってもつかいきれないほどの金!)。
悪魔が兵隊を食べてしまおうととびかかろうとするが、兵隊が袋に入れというと、悪魔は袋の中へ。そしてこの袋を鍛冶屋にたたかせると悪魔は悲鳴をあげ、たすけてくれるよう兵隊に頼み込みます。
抜け目のない兵隊は、悪魔に、用事があれば忠実につかえるという約束を、血で書いて署名させます。
やがて兵隊は結婚して息子がうまれるが、この息子が病気になって日に日に悪くなる。ここで血で約束をしていった悪魔を呼び出し、息子の病気のことを尋ねると、死神が足元に立っていると病気はなおるが、頭のところにたっていると手のほどこしようがないと答えあす。
息子は死神が足元にたっていたので病気はなおってしまうことに。
その後、兵隊はグラスをのぞいて、死神が足元にたっていると、病人に水をかけ、それをなおし、頭にたっていると”寿命です”という。
王さまが病になって、グラスをのぞくと頭に死神がたっていたので、4,5分のお命ですというと、王さまがなぜ直せないかと問うので、兵隊は自分の命とひきかえに、王さまをたすけてくれるよう死神にたのみ、王さまは元気になります。
兵隊が迎えに来た死神に、妻と息子に別れをいいたいので、1時間だけまってくれるようたのみ、袋をつかって、死神を閉じ込め、その袋を高いポプラの木の枝にかけます。
このあと死神が役割をはたせなくなったので、死ぬ人間がいなくなります。
あるおばあさんが、兵隊に大変な罪を犯したと諭す。
反省した兵隊は、死神を袋からだし、命をとってくれと頼むが、死神はこわくて”悪魔にたのむんだね”といっていなくなる。
やがて兵隊は地獄に行き、煮てもらうためにきたというが、悪魔は前に散々な目に合っているので、地獄には入れてやらないと門前払い。
天国にいっても、門前払い。
結局、兵隊は地獄にも天国にもいけず、生き続けることに。
何ともいえない結末。子どもにとっては少し意表をつかれるかもしれない。
昔話の兵隊は、お役御免のところからはじまるが、この話のように、25年もたっている少なくとも40代ということになりそう。兵隊としてつかわれても無報酬というのは、残酷か。
この話のように金はあっても死ねないというのも残酷。