これまで聞いたお話し会のプログラムを見ると、「屋根がチーズでできた家」はありますが、同じ話型の「ヘンゼルとグレーテル」はほとんどありません。「ヘンゼルとグレーテル」がだいぶ長いというだけでなく、親が子を捨てるので、女性の語り手は取り上げにくいのかも知れません。
しかし「屋根がチーズでできた家」も、親が兄と妹を森においやるので、実は子を捨てるという意味がありそうです。
また、「白雪姫」の初版では、実母が白雪姫を殺そうとします。衝撃をやわらげるため、継母に変更されたようですが原型は初版のほう。
このほかにも、捨てられるところからはじまる昔話があります。これは、当時の社会状況を反映しているようで、生活ができなくなったとき、子どもを捨てる行為は、生き延びるためのやむを得ない選択のようだった。
キリスト教の影響で堕胎や中絶、子殺しをするのではなく、産んでから捨てるということがあったようで、西欧では中世の早い段階から孤児院や養育院が各都市に建てられていたといいます。
*世界の人口推計によると(単位:億)
西暦元年 2~4
1650年 4.7~5.4
1750年 6.3~9.6
1800年 8.1~11
1900年 15.5~17.6
2000年 60
いま親しんでいる昔話は、グリム兄弟やペローによるところが大きいが、グリム兄は1785年、ペローは1628年の生まれで、当時収集された昔話は、千数百年のあいだ、それほど人口が増えていない時代のもの。
しかし、19世紀に入ると人口は飛躍的にのびることになりました。
農業革命により、食糧生産が大幅にのびたことが背景にありますが、この時期での昔話は、当然以前のものと違ったものになる。