どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

夢の長者

2015年10月30日 | 昔話(日本)
    日本の民話8 長者への夢/瀬川拓男・松谷みよ子・編/角川書店/1973年初版


 昔話が成立したのが、江戸時代の前以前と考えると、産業は農業が中心。

 日本の農業では、あまり大規模な農業がなく、自作農であっても規模はそれほどのものでなかったようである。

 さらに過酷な年貢もあって、生活はぎりぎりで、自然災害がくわわると、その生活の程度は想像にがたくない。
 こうしたなかで、農民が長者になることは夢のまた夢。

 昔話のなかに、長者にかかわる話が多くあるのも、かなわぬこととおもいながらも、空想のなかで願望をみたすことにつながっているようでもある。

 農業ではないが、炭焼きが夢を信じ、小判を手に入れるのが「味噌買い橋」

 また旅をしていた二人の男の一人が、昼寝をしたとき奇妙な夢をみたと、もうひとりの男に話すと、その男が夢を売ってくれともちかけ、夢に出てきたあたりを掘り返すと金の鉱脈がぶつかる。「夢買い長者」

 天から雨のように黄金がふってくる夢をみるのが「天福地福」

 夫婦が山の畑にいって、男のほうが昼寝のとき、うまい酒の飲んでいる夢をみて、その酒のあったあたりにいってみると、泉から酒がわいていて、それを売って大金持ちになる「だんぶり長者」。
 だんぶりはトンボのことで、男が夢をみているとき、顔のあたりをトンボが飛び回っているときに、その夢をみるというもの。

 信じないことにははじまらない昔話。
 
 余計なものがあまりなく、ストレートに表現されている昔話です。