時計つくりのジョニー/作:エドワード・アーディゾーニ・作 あべ きみこ・訳/こぐま社/1998年
ジョニーは、ジェーンおばさんからもらった「大時計のつくりかた」を何十回も読み直し、大時計をつくろうと思います。ところがお母さんも、お父さんも、先生も、大時計なんかつくれないでしょとつれない態度。
先生がおばかさんとよんだので、子どもたちもいじめる始末。それでも女の子スザンナは、いじめっ子のなかまにはいらず、「大時計、ぜったいできるわよ」と励ましてくれます。
ジョニーは、とても手先が器用で、かなづちで釘を打ったり、のこぎりで木を切ったりして、ものを作るのが大好きでした。大時計の箱を木でつくりはじめますが、木を切ったりかなづちで釘うちはじめると、お母さん、お父さんは「ジョニーが また ばかなこともやっている」と、おてつだいをいいつけたりして、ずいぶんと時間がかかりました。
それでもようやく箱ができあがり、文字盤はボール紙をまるく切り抜いて数字をかき、長針、短針は錫箔から切り抜いてつくりました。
それからが大変です。大中小の歯車、その歯車をとおす軸、おもり、鎖、振り子が必要です。
自分では作れないので店で買わなければいけないのですが、金物屋や自動車修理工場では手に入れらません。
お父さんに頼んでも「だめだ」というだけ。お母さんも相手にしません。
それでもスザンナに相談すると「鍛冶屋のジョーさんに きいたらどう」といわれ、鍛冶屋のジョーさんのところへ。職人のジョーさんは、ものづくりに理解があって、ジョニーに手伝わせて必要なものを用意してくれます。
途中部品の入った買い物袋をいじめっ子のひったくりされますが、スザンナの励ましで、買い物袋を見つけ、さっそく歯車などを時計につけていきます。
苦労したのは振り子。遅かったり、早すぎたりとうまくいきません。それでも振り玉を調節するとチクタクチクタクと正しく時を刻み始めます。
大時計は表紙に描かれているように、柱時計よりもっと大きな時計。
はじめは親がジョニーを理解しようとせず、先生もまったく相手にしません。そしていじめっ子まで。同じようなことが身近でもありそうです。(でも最後の方では素敵な場面が続きます)
それでもジョニーが初志貫徹できたのは、スザンナの励ましと子どもの言うことでも、ちゃんと受け止めてくれたジョーさんがいたからです。
かならずできると頑張ったジョニーに、自分を重ねて共感する子も多いようです。
子どもの頃、自分が打ち込めることをみつけられるのは大事なことで、大人の役割は、子どもの可能性を信じてあげることでしょうか。失敗しても夢を壊すことだけは避けたいものです。
絵も落ち着いた素朴な感じ。吹き出しのセリフも漫画風で、親しみやすいかもしれません。