ふしぎなオルガン/リヒャルト・レアンダー・作 国松孝二・訳/岩波少年文庫/2010年新版
レアンダー(1830-1889)の「ふしぎなオルガン」は、語られるのも多い話ですが、「若返りの臼」は、なにか考えさせられる話です。
若返りのもとは、水ならぬ臼です。
この臼にはいると、しわくちゃで、こしのまがった髪の毛も歯もぬけたようなおばあさんが、リンゴのように赤い綺麗な女の子に若返ってでてきます。
臼にひかれたら骨まで粉々にされてしまうのではないかと思っていると、作者はちゃんと答えを出しています。
若返って出てきた人は「ぐっすり眠り、朝、目を覚ますと部屋の中に、朝日がさしこんでいて、外には小鳥がさえずり、木がサラサラとゆれている。そこで、もういちど、ベッドの中で、思いきり背伸びをする、まあ、その気もちににているわ。」
臼のことを聞いたひとりのおばあさんが、自分もと でかけていきます。
臼ひき場には、一人の職人がいて、若返るためには、書付に署名しなければだめといいます。
この書類には、おばあさんがこれまでの人生であったことが、ことこまかく書いてあって、若返っても、きちんと同じ順番で繰り返すことを約束する書類でした。
おばあさんは、書きつけに書いてあるのを、いくらかでも、せめて三つだけでも削ることできないか交渉しますが、職人のこたえはつれないものです。
「このままやるか、やめるか二つに一つだ。」
おばあさんはためいきをついて「冗談じゃない。そんなら臼でひいてもらっても、何の足しにもならんわ」と、そのまま家に帰ります・・・。
おばあさんの人生には、いいこと、ワクワクするようなことが何一つなく、同じ人生を歩むのだったら若返る必要はないと思ったのでしょうか。
どうもこの臼、女性専用なのか男の話はどこにもでてきません。男の若返りは必要なさそうですよ。