はなのすきなうし/作: マンロー・リーフ 絵: ロバート・ローソン 訳: 光吉 夏弥/岩波子どもの本/1954年
語りで聞いたことがあります。そのときは理解できませんでしたが、語り手の印象がつよくずっと記憶に残っていました。
原著は1936年に発行され「THE STORY OF FERDINAND」とあります。
1954年に翻訳され、2000年で44刷と、これも息が長い絵本。
子どもが自分で読むことを前提にしているためか、カナや漢字は一切ありません。出版年を反映してか絵はモノクロです。
牛のフェルジナンドは、他の子牛たち毎日飛んだり跳ねたり駆けまわったり頭を突っつき合ったりする中で、いつもひとり草の上に座って、しずかに花のにおいをかいでいるのが好きな牛でした。
おかあさんは、いつもひとりでいるフェルジナンドのことが心配でしたが、本人がさびしがっていないことがわかっていたので、すきなようにしておいてやりました。
としがたつにつれてフェルジナンドはどんどん大きな強い牛になりました。
ある日、変な帽子をかぶった五人の男がやってきます。闘牛にだす一番の大きな、一番強い、一番足の速い、乱暴な牛を探しにきたのです。
フェルジナンドはいつものようにすきなコルクの木の下にすわりにいきます。ところが腰をおろしたのは、おおきなくまんばちの上。お尻をいやというほど刺され、頭をふりたて、地面をけちらかせ暴れまわります。
これを見た牛買いたちは、とびきり ものすごい牛を見つけたと大喜びし、フェルジナンドを闘牛場へと連れて行きます。
闘牛場で、みんながフェルジナンドが猛烈につっかかって角で突きまくると思って期待していると、フェルジナンドは、観客席の女の人が花をさしているのをみて、ゆうゆうと、花のにおいをかぎはじめます。
闘牛士たちが、いくらやっきになってもたたかおうとも、あばれようともしないフェルジナンドです。
フェルジナンドのおかあさんは、おなじようにしなさいというのではなく、みんな違っていいと個性を尊重している理解あるおかあさんです。
文化の違いでしょうが、闘牛に夢中になるというのはなかなか理解できません。
このなかに、長い剣、槍は牛を怒らせ、闘牛士の剣はとどめを刺すためのものというのがでてきますがフェルジナンドのとった行動は、その対極にありました。