ものいう馬/こだまともこ・訳/ほるぷ出版/1979年
両親がなくなって、ひとりぼっちになった若者が、屋根裏部屋で発見したのは網でした。
父親が漁師をしていたことも知らなかった若者は、魚をとりはじめます。
ある日、とても美しい魚をとりますが、あまりにきれいなので、売るのも食べるのもおしくなって庭に井戸を掘り、中にいれておきました。
いつものように海にでかけ、帰ってみると家の中はきれいにかたずいていました。
次の日も、夕方家に帰ってみると、また家の中がきれいに掃除されていました。
コーヒー店にでかけ、客からふしぎな出来事を確かめてみてはどうかといわれ、ものかげにかくれてようすをうかがっていると、井戸の中の魚がぴょんと飛び出し、美しいむすめになりました。
若者はすばやくとびだし、むすめのぬいだ魚の皮を、火に投げ込んでしまいます。
むすめは若者をとがめますが、すんでしまったことは、しかたがないと物分かりがはやく、おまけに若者のよめさんになってもいいといいます。
さっそく結婚準備をはじめた若者でしたが、この美しいむすめの評判をききつけた王さまが、「四十日の間に、金とダイヤモンドでつくった宮殿を海の中にたててみよ、もしできなかったら、むすめはわしのものじゃ」と、無理難題をいいだします。
むすめのいうとおりにすると宮殿はすぐにできあがります。
次に王さまは「浜辺から宮殿まで水晶の橋をかけよ」と命令します。
さらに「国中の者が、みんなはらいっぱいたべても、まだあまるだけのごちそうを用意せよ」「たまごから、ロバが生まれるのを見たい」との命令。
海の大男からたまごをもらって、若者がいすの上にたって、たまごを放り上げると、殻がわれてロバが飛び出し、王さまの上になっさかさまにおちてきました。
王さまをたすける必要はないのですが、若者が王さまを助けてあげると 「生まれて一日しかたっていないのに、歩くことができて、おしゃべりもできる赤ん坊をつれてくるように」と命令します。
王さまの難題の解決は、すべてむすめの指示です。
「生まれて一日しかたっていないのに、歩くことができて、おしゃべりもできる赤ん坊」が、王さまのところにいくと、赤ちゃんは、いきなり王さまの顔をぴしゃりとたたき いいます。
「どうして、たったの四十日で、金とダイヤモンドの宮殿ができるんだい? どうして、たった四十日で、水晶の橋をかけられるんだい? どうして、ひとりの男が、国中の人が食べられるだけの ごちそうをつくれるんだい? どうして、たまごから、ロバがかえるんだい?」
ひとこというたびに、赤ちゃんは王さまの顔をぴしゃぴしゃたたきました。
昔話ですから無理難題でも実現するのが当たり前とおもっていると、ラストのオチが痛烈です。