どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

鬼ぞろぞろ

2020年01月23日 | 絵本(昔話・日本)

    鬼ぞろぞろ/舟崎克彦・文 赤羽末吉・絵/偕成社/1978年

 

 大晦日の夜遅く、鬼の行列に遭遇し、唾をかけられ姿を消されてしまった身分のひくいさむらい。

 「神仏のお力にすがるほかない」男は心にきめると、三条の六角堂におまいりに。

 本堂にこもって、いっしんにいのりつづけます。はらがへるとお参り客の弁当を盗み食いしてしのいでいましたが、だれひとりきずきません。

 そのうち、姿が見えないことをいいことに、お堂にこもっている客の荷物をくすね、ちいさな盗みに飽きると、町の屋敷をねらい、すぐちかくのあばらやにためこんだので、たからものは はちきれるばかり。

 そんなある日、男は夢の中で観音さまのおつげをききます。

 「はじめにであったものの、いうことをきくがよい。それから先は、こうふくになるもならぬのも、おまえしだいじゃ。」

 一番どりの声で、お堂をとびだすと、おそろしげな牛かいに「おまえはなかなか悪い男らしいな。おれのしごとを、てつだわしてやる」と連れていかれたのは、とある大きな屋敷。

 屋敷には床に臥せった姫ぎみがいて、牛かいは、男の手に 槌を握らせ女のからだをおもうぞんぶんうつようにいいます。

 男はいわれたとおり、姫のからだをうちはじめますが、姫があわれな声をあげてなきもだえるので、すぐに自分のやっていることが我慢できなくなります。

 「なぜおれが こんなうらみもない人を痛めつけなければならないんだ。盗みを働いたり、人を痛い目にあわせたりしているうちに、おれは、人間の心をなくしてしまうぞ。それどころか もう二度と 人間の姿に もどれなくなってしまうんだ」

 男がとっさにとった行動とは?

 今昔物語のなかの物語です。

 男は、盗みでほうせきをどっさりため込み、さらにもとのすがたにもどりたい観音さまにおいのりするのは、じつに自分勝手。

 しかし、最後は、男が屋敷の跡取りにむかえられるハッピーエンド? でも、たからものをかくしたあばやらは? 男が良心を失っていないのが救いです。

  赤羽末吉さんが描く鬼、観音さまのシルエット、絵巻物風の屋敷、人物など今昔物語の世界も楽しめました。