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古井戸に落ちたロバ/北山耕平・作 ・oba・絵/じゃこめてい出版
文書の量は少ないのですが、不思議な余韻が残る絵本です。
荷物を運んでいたとき、使われていない深い古井戸に落ちてしまった としよりロバ。
としよりロバが自分ではい上がることも、じいさまがひき上げることもできないほど深い深い古井戸。
子どもたちが落ちてはいけないと じいさまは、ロバを助けることをあきらめ、ロバごと穴を埋める決断をします。
助けを求めて、ずっと泣いていたロバの上に突然、土が降ってきます。
疲れ果てたロバは暴れることをやめますが、体の上に、ほとんど土がつもっていないことにきずき、土が降りかかるたびに、それを何度も何度も払い落しては、足元を固めていき、太陽が昇りはじめるころ、ようやく、古井戸からでることができます。そのままとしよりロバはゆっくり歩きだし、一度も振り返ることはありませんでした。
突然襲ってくる困難を 仕方がないとあきらめるか、前向きに考えるかは紙一重です。
古井戸のまわりに囲いをつけて、子どもが落ちないようにする選択もあったのではないかという感想もあったといいますが、やはりメッセージは、降りかかった土のなかから立ち上がる方が強いものとなりそうです。
ロバは 穴に土がふってきたときに じいさまを恨んだのか。それとも年老いて役にたたなくなったので仕方ないと考えたか、どちらだったのでしょうか。
じいさまは、歩きだしたロバをひきとめませんでした。じいさまが古井戸に土を降らすことがなければ、ロバが遅すぎた?自由を手に入れることもありませんでした。
朝、地平線に太陽が昇りはじめるなか、去っていくロバが小さく小さくえがかれているのが印象に残りました。
インディアンのティーチングストーリーで、「生きることをおしえるはなし」とありましたが、考えさせられる話です。