どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

天国に行ったお百姓

2020年05月10日 | グリム

     グリムの昔話3/フェリックス・ホフマン:編・画 大塚勇三・訳/福音館文庫/2002年

 

 貧しくて信心深い百姓が天国の門の前にやってきました。おなじときに、それはそれは大金持ちの旦那も天国にはいろうとやってきました。

 聖者ペテロは、大金持ちの旦那を天国の中へいれますが、貧しい百姓には気がつきませんでした。

 旦那は天国で大歓迎を受けているとみえて、中からは音楽や、歌声が聞こえてきました。

 そのうち、やっとお百姓も天国の中に入ることができましたが、どこもかしこもひっそりと、しずまりかえっています。

 貧しいお百姓が「なんで、わたしがきたときには、あの旦那のときみたいに、歌をうたってくれないでしょう。」と、ペテロさまにたずねます。

 するとペテロさまがいいました。

 「おまえさんは、ほかのみんなとおなじように、ありとあらゆる天国の喜びをあじわうことができる。しかしなあ、おまえさんのような貧しいお百姓は、毎日毎日、この天国にやってくるのだが、ああいう金持ちの旦那なんかが、やってくるのは、百年のうちに一ぺんくらいしかないんでねえ」

 天国でも下界とおなじように、えこひいきがあるみたいという、お百姓の実感はあたっています。それでもお金持ちが天国に入れるのが36500分の一と考えれば、天国の有難みに感謝しなければいけないのかも。