グリムの昔話3/フェリックス・ホフマン:編・画 大塚勇三・訳/福音館文庫/2002年
貧しくて信心深い百姓が天国の門の前にやってきました。おなじときに、それはそれは大金持ちの旦那も天国にはいろうとやってきました。
聖者ペテロは、大金持ちの旦那を天国の中へいれますが、貧しい百姓には気がつきませんでした。
旦那は天国で大歓迎を受けているとみえて、中からは音楽や、歌声が聞こえてきました。
そのうち、やっとお百姓も天国の中に入ることができましたが、どこもかしこもひっそりと、しずまりかえっています。
貧しいお百姓が「なんで、わたしがきたときには、あの旦那のときみたいに、歌をうたってくれないでしょう。」と、ペテロさまにたずねます。
するとペテロさまがいいました。
「おまえさんは、ほかのみんなとおなじように、ありとあらゆる天国の喜びをあじわうことができる。しかしなあ、おまえさんのような貧しいお百姓は、毎日毎日、この天国にやってくるのだが、ああいう金持ちの旦那なんかが、やってくるのは、百年のうちに一ぺんくらいしかないんでねえ」
天国でも下界とおなじように、えこひいきがあるみたいという、お百姓の実感はあたっています。それでもお金持ちが天国に入れるのが36500分の一と考えれば、天国の有難みに感謝しなければいけないのかも。