どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

りゅうのめのなみだ

2020年05月26日 | 絵本(日本)

    りゅうのめのなみだ/文・はまだひろすけ 絵・いわさきちひろ/偕成社/1965年

 

 国の山のどこかにかくれているという龍。

 「いたずらっ子や わるい 子を 龍は ねらっているんだぞ」と、大人も言うので、子どもらは みんな龍をおそれていました。

 ところが ひとりの子が 「ちがうちがう。こわくはないよ。かわいそうなんだ。どうして だれも あの 龍を、かわいがってやらないの」と、誕生日に龍をよんでよと頼むと、お母さんは「わるふざけの 子は、だいきらい」と、怒ります。

 ところが ふしぎな 子どもは、誕生日を前に 山にでかけていきます。

 木の下で一晩を過ごし、やまもも、きいちごを、食べながら山にはいりますが、やまはひっそり。

 子どもが、深い谷間で「やまの りゅう やまの りゅう」と、よびたてると、「おうい、なんの よう。」と返事。そして龍は、暗いほら穴の奥からはいだすと、こどもからたんじょうびにくるよう いわれます。

 これまで、人間から、ただの一度も、やさしい声を かけてもらったことがない、それどころか いつでも 嫌われ、憎まれ続けてきた龍。

 子どもの思いがけない声を聞いた龍の目から涙があふれだすと、涙が川のようにながれだします。

 龍は「舟に やさしい こどもを たくさん たくさん のせてやろう。そう やって、この世のなかを、あたらしい よい よのなかにして やろう。」と、舟になって、子どもをのせ、町へ戻っていきます。

 怖いものといわれ続けてきた龍に、なんの偏見も もたない勇気のある子ども。自分で判断することの大事さが伝わってきます。

 そして、だれからも相手にされなかった龍が、子どものやさしさにふれ、涙になったのでした。

 いわさきちひろさんの中国をおもわせる情景も素敵です。

 ちひろさんが亡くなられてから、今年で もう46年もたちます。