山梨のむかし話/山梨国語教育研究会編/日本標準/1975年
一人のお坊さんが、いくつも山をこして、石和の里に着いた。疲れていたし雨も降りそうだから、そのへんの家にいって宿をお願いしたがどこにいっても断られ、わけを聞くと、ひとだまがでたり、ゆうれいがでるという。
そこで、坊さんは石和川の土手にあるお堂にとまってみることに。お坊さんが横になっていると知らぬ間に、やせこけた年よりがだまってたっていました。
年よりがいうには、石和川で禁止されている魚をとり、筵にくるまれ川の中へぶっこまれてしまったという。反省はしているが、魂がちっとも言うことを聞かず、晩げになると歩き回るという。
つぎの朝、夕べと同じ川ばたにおりていった坊さまは、川のなかの小さい石を拾って、そのひとつひとつにお経を一字ずつ書いて、またもとの川に投げ込みました。お経はえらく長いので、そりゃあ時間がかかったと。晩になると年よりの泣き声。何日かそんなことが続き、おしまいの一字をかきおわると、おぼうさんは「なむみょうほうれんげっぎょう。なむみょうほうれんげっぎょう。なむみょうほうれんげっぎょう。」と拝むと、それまで聞こえていた泣き声がぴたったやんでしまったという。
かがり火であかるくなった川のなかでの鵜飼いの風景もでてきますが、山梨の鵜飼いも調べてみると興味深いものがあります。
おぼうさんがでてくると弘法太師というのが多いのですが、このお坊さんは日蓮上人という。