あたまをつかった小さなおばあさん/ホープ・ニューウェル・作 山脇 百合子・絵 松岡 享子・訳/福音館書店/1970年
ホープ・ニューウェル(1986~1965)はアメリカの作家。といっても長い間看護婦を続けたとありました。
一人暮らしの小さなおばあさん、大変貧乏でしたが、ガチョウがいて、畑がありました。
おばあさんの口癖は「つかわないんなら、あたまなんか もってたって、なんのやくにたつね?」
たしかに、おばあさんは、あたまをつかいました。つかいましたとも。
導入をのぞけば、9編の話が独立していますが、なんともマイペースのおばあさん。
・おばあさんがはねぶとんをてにいれた話
ガチョウを買って、羽で羽ふとんをつくろうとしますが、いざ羽をむしろうとすると、そこまで冬がやってきたので、寒いだろうと、自分のつかっていた毛布から赤い上着を作って、羽をとったガチョウにきせてあげます。
羽布団ができて、ガチョウも赤い上着を着ることができてあたたかくすごせるのですが・・。
・おばあさんが、いたずらねずみどもから、とうもろこしをまもった話
ねずみは八匹。ガチョウのためにおいてあるとうもろしをとっていったり、おいばあさんの食料をくいあらしたり。
ねずみとりに一匹がかかり、水につけてころそうとしますが、ねずみが目をパッチリ開けて自分を見ているのを見ると、どうしても水につけるきになりません。
なんどかそんなことが続き、逃がしてやろうと思ってもにげていきません。結局ペットがわりにすることに。ほかのねずみも同じで、ペットのねずみが八匹に。
・おばあさんが、たった一本のこったマッチをだいじにした話
マッチ箱に残ったのはたった一本。明日買い物に行くまで、夜ランプをつけるのにどうしても必要な一本。
アイロンをかけていてもマッチのことが心配。折れてしまわないように、ワタでしっかりくるみます。 ところが、こんどはしけてしまわないか心配で缶にいれます。またまた心配事が。マッチがつくか心配で、マッチをすってみることに。今度はランプをつけようとしてもマッチがありません。でもおばあさん本当に頭がよかったようですよ。いつまでも心配してもしかたないですから。あとはなんとかなりましたよ。
・おばあさんが、はたけになにをうえたかという話
チューリップとたまねぎの球根がみわけられなくなったおばあさん。畑と窓の植木箱にそれぞれうえます。畑にはチューリップが、窓の植木箱にはたまねぎがそだつのですが、おばあさんはいたって陽気。
畑のチューリップは通る人が楽しめ、窓の植木箱のたまねぎはスープを作るとき、手ぢかにあって、とても便利。自画自賛、おばあさんはたしかに賢い。考え方ひとつで人生楽しくなります。
・おばあさんが、買いものをした話
おばあさんが行商人から買ったのは、ものが大きく見える拡大鏡(眼鏡)。パンも肉もうんと大きく見えて、買い物をしたのはよかったのですが、拡大鏡をはずすと、パンも肉も、うんと小さい。でもまた拡大鏡をかけてごはんを食べるとちょうどよい大きさでおばあさんは満足です。
おばあさん、おなかはいっぱいになったでしょうか。
山脇百合子さんの、おばあさんが、ぬれタオルを頭に巻いて、いすに座り、人差し指を鼻の脇にあて目を閉じ考えるポーズの素朴な感じの絵があって、思わずマネしたくなるのもわかります。
あたまをつかった小さなおばあさん がんばる/ホープ・ニューウェル・作 隆矢なな・絵 松岡 享子・訳/福音館書店/2019年
10話の短編。前作は1970年で、この続本は50年たっています。
・おばあさんが、サーカスがまちにくるのをみた話
まちにサーカスがくるのですが、小さなおばあさんは、入場料を買うお金がありません。 せめて、朝うんと早起きして、サーカスの動物たちが、まちの広場に入ってくるのをみにいくことにしました。
早起きするため、毛糸をぬらして足にむすび、もう一方はベッドの柱に結び、毛糸がちぢんで、足のゆびがひっぱられたら目がさめるようにしました。
これだけでは心配で、ねずみのしっぽにも、ぬらした毛糸を結び、もう一方はストーブの足に。がちょうにも おなじことを。
ところが、この仕組みで目をさますと、まだ暗くて、たっぷり時間があります。
おばあさんはどうしたでしょうか。小さなおばあさんは、時計なんてものには興味がないようですよ。
・おばあさんが、ぞうのあかちゃんをしあわせにした話
サーカスからかえってみると、畑の中に、ぞうのあかんぼうがいました。ぞうのあかんぼうは、にんじんや、キャベツ、かぶをつぎつぎひっこぬいていました。それなのに、小さなおばあさんは 眺めるだけ。居心地をよくしようと小屋づくりにかかります。ところが、ぞうが小屋をひきずってあるこうとすると、なんどもころびそうになります。
おばあさんは、手押し車から車輪をはずし、ぞうのあかんぼうの小屋の柱の下に、ひとつづつつけてあげます。その結果、ぞうのあかんぼうは、鼻でにんじんや、キャベツ、かぶを引っこ抜いては食べます。それでも、おばあさんは、畑の野菜を全部食べられたら、ぞうのあかんぼうにどうやって食べさせるか考えています。
あしたは何とかなるだろうと おばあさんは前向き?です。
・おばあさんが、イースターのぼうしをつくった話
イースターの前の日、教会にかぶっていく 古いむぎわらぼうしが いかにもみすぼらしいので はずかしくなったおばあさんは、いいことを考えました。チューリップで花輪をつくり、ぼうしにピンでとめました。鏡の前に立つと、花のかざりは、とってもきれいで 大満足。
ところがつぎの日、チューリップは、しおれて、花びらがぜんぶおちかけていました。「これじゃ、毎日新しいチューリップを、とってつけなきゃならないねえ」と考えたおばあさん。 毎日、八本づつチューリップをつんだら、きぬのはぎれでチューリップを八つつくって、チューリップ畑にさすことにしました。
きぬでチューリップをつくって、畑にさすことを思いついたおばあさんは、きれいなぼうしもかぶって、満足そうです。