(さてさて、きょうの おはなしは・・・/瀬田貞二:再話・訳 野見山響子・絵/福音館書店/2017年)
イギリスのジェイコブズ再話を、瀬田貞二さんが再話したものです。
ある冬の夜、やっと帰ってきた墓掘が、うちのとびこむなり、「トム・ティルドラムって、だれのことだね?」とききます。
「あらまあ、いったい、なんのこと? トム・ティルドラムがだれのことだか、しりたいの?」とおかみさんがきくと、墓堀が話しはじめます。
「フォーダイスじいさんの墓をほっていて、ついついねむっちゃたらしいのさ。ニャーオとねこがなくので目がさめたら、九ひきの黒ねこが、なにをかついでいたとおもうね。黒いビロードがかけてあって、その上にちいさな金の冠がのせてある小さな棺桶を一つ。ねこども、三歩あるいちゃあ、ニャーオってなくんだよ。ねこの目はみどりの火みたいにひかって、しだいにおれのほうへきた。八ひきは棺桶をかついで,一番大きなねこが先をあるいていて。そのねこが<トム・ティルドラムにいってくれ、チム・トルドラムが死んだとな>。だから、トム・ティルドラムは誰かとおまえにたずねたのさ。トム・ティルドラムがだれだかわからなければ、トム・ティルドラムにおしえてやれないだろう?」
墓堀が話しているあいだ、この家のくろねこのトムが、タイミングよくないたり、男をじっとみたりと、なにやら思わせぶりです。
「トム公をごらん、トム公をごらん!」とおかみさんがかなきり声をあげたさきで、トムは、みるみるうちにふくれだし、ギロギロ目をもやし、口をあけて、キーキー声でさけびます。
「なに!? チムが死んだと! それじゃ、このおれが、ねこの大王だ!」
そして、トムは暖炉の煙突の穴におどりあがって、それっきり、いなくなります。
季節は冬、時間は夜、黒猫、仕事は墓堀と舞台仕掛けは万全。最後に「トム・ティルドラム」の正体は墓堀一家のねこだったとわかるのですが、そこまでは謎解き風で進行していきます。
かいねこ?もトムですから途中で結末も予想させながら、そこまで引っ張っていく小憎らしさが魅力です。
ときどき、ミステリーな結末の昔話にであえます。
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