グリムのむかしばなしⅡ/ワンダ・ガアグ・編絵 松岡享子・訳/のら書店/2017年
戦争がはじまりましたが、王さまが、少ない給料しか払ってくれないので、三人の若い兵士が軍隊から逃げ出しました。
当初の目論見では軍隊がすぐ移動するのを見越していましたが、軍隊がいつまでたっても移動しないので、逃げ出すチャンスがきません
飢えと渇きに苦しんでいたとき、竜が空からまいおり、ライ麦畑にかくれていた兵隊にわけをききました。兵士はこたえました。「王さまときたら、おれたちを戦に駆り立てるだけ駆り立てておいて、給料をほんのぽっちりしかくれないんでね。だけどいまは、ここで飢え死にしかけています。食べ物をとりにいこうとしたら、まちがいなくつかまって、この世とおさらばってことになるんでね。」
この竜なんと親切で、ヒュッとひとうちすれば、空から金貨がふってくるという小さなむちをくれました。もちろんちゃんと条件がありました。七年間は、いい思いのし放題だが、七年たって、なぞがとけないなら、永久に竜の言いなりになるというものでした。選択の余地はなかったので、兵士は、竜の差し出した帳面に、ふるえながら名前を書きました。
さてそれから、兵士たちは、あっちにいったり、こっちにきたり、りっぱな着物を買い、豪華な馬車で、かっこうにいいくらしををたのしみました。ところが約束のときが近づくにつれて、兵士の二人はおちこんで、びくびくするようになりました。でも三人目は平気でした。
ここで、昔話ではおきまりの救い主があらわれます。おばあさんが、竜との約束を聞いて、「森へ行って、おおきながけをみつけるまで、あるきまわりなさい。家みたいな洞穴があるから、そこへはいっていくのさ。そうすりゃ、そこで助けは見つかるだろうよ。」
洞穴を見つけると、そこにはまたおばあさん。ひどく年とったおばあさんで、竜のおばあさんでした。おばあさんは、孫のことをあまりこころよくおもっていませんでした。
兵士たちは、地下にかくれ、おばあさんと竜の話に聞き耳をたてました。
数日すると、七年があけ、竜があらわれました。竜は兵士たちとの約束した帳面を出し、なぞなぞをだしました。
一問目は、「おれの領地で宴会をひらいてやろう。そのとき、あぶり肉にはなにがでると思う?」
二問目は、「なにがスプーンになる?」
三問目は、「ワイングラスは何か?」
兵士たちは、おばあさんと竜の会話を聞いていましたので、なんなく、なぞなぞをクリアし、その後も、苦労知らずの陽気なくらしにもどりました。
なぞなぞのこたえ。一問目は、北海の死んだ尾長ざるの肉
二問目は、クジラのあばら骨
三問目は、中がからになった古い馬のひづめ
兵士たちをまちうけている怖さがつたわらず、なぞなぞを楽しむ昔話でしょうか。しかし、このなぞなぞも、子どもの興味をひくでしょうか?