どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

アリーテ姫の冒険

2019年01月02日 | 創作(外国)


   アリーテ姫の冒険/ダイアナ・コールス・著 ロス・アスクイス・絵 グループ ウイメンズ・プレイス・訳 公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会・監訳/大月書店/2018年復刊版


 30年前に男女共同参画センター横浜の監修で翻訳出版されたものが、昨年11月に復刊されたものです。八章からなり、物語は、昔話風にすすんでいきます。

 もともと結婚する気などなかったアリーナ姫が、父親から命令されてボックスという年かさの男と結婚することになりました。

 国の決まりで父親の命令に従わざるを得なかったのですが、父親は宝物がこの世で一番大切で、ボックスの宝石にめがくらんだのでした。
 おまけに賢いというアリーナ姫が三つのしごとをやりとげられなかったら首を切り落としていいという証文まで書いた父親でした。

 ボックスは妻の姫を薄暗くて陰気なお城に連れて帰ると、いくつもの扉をくぐり、暗くて長く続く階段をおり、地下の小部屋に押し込めて、外から頑丈な鍵をかけてしまいます。

 ところでアリーナ姫にはワイゼルという召使のおばあさんがいて、読み書き、縫物、絵の描き方をおしえてくれていました。

 ボックスの城にいくとき、ワイゼルおばあさんは、こすりながら願いごとをいうと願いををかなえてくれる指輪を姫の指にはめてくれます。ただ願いをかなえてくれるのは3回だけでした。

 ボックスが姫を城に連れてきたのは、占い師が水晶の玉でアリーナ姫が死に追いやると予言されていたからでした。

 じつは、ボックスもワイゼルおばさんも魔法使いでした。

 ボックスと召使のグロベルは、アリーナ姫を死においやるための難問を考えますが、なかなかうまい難問がうかびません。といっても考えるのはもっぱらグロベルで、ボックスは難癖をつけるだけ。、

 三つの難問があって、魔法の指輪がかなえてくれるものが三つですから、指輪で難問を解決すると思いきや、アリーテ姫の願いは予想外のことでした。

 一つ目は、殺風景な地下室に絵を描くための虹の色や、絵の具、筆です。

 二つ目は、布と針と糸。第一の難問ででかけたとき、姫の服がやぶけ、草の汁でしみがついていたからです。さらに緑色のズボン、クリーム色の上着、さらに城で食事を作ってくれていたアンプルのでレスまで。

 三つめは、絹のリボンでたばねたノートと金色のペンと、黒、緑、赤のインク壺でした。物語を描いたのです。

 この物語、最後がさわやかです。アテりーナ姫は、三つの難問を解決する中で手に入れた、永遠の井戸の水、病気をなおすルビーをもって、雨がふらなくて作物が育たない国や、病気でこまっている国のやくにたつべく、銀色の馬にのって、旅にでます。

 アリテリーナ姫がいる城にはアンプルという料理人がいましたが、ある日の夕食はチキンパイとフルーツタルト、ココア、ある日の朝食はリンゴとチーズ、夕食はお団子入りのラムシチューとクリームつきのアップルパイ、あるときはたまねぎをそえたビーフステーキなどど毎回手が込んでおいしそうです。

 アテリーナは、「かしこかったら よめのもらいてがない」という父の王さまに、結婚したくないといい 自分の考えを話して、家庭教師と喧嘩、お見合いにやってきた王子をチェスで、あっというまに勝ってしまい、「あなたの瞳は深い森の湖のようだ、あなたの髪はしなやかな絹糸のようだ」とほめたたえる王子をまったく無視します。

 物語として十分に楽しいし、まわりの偏見や思いこみにまどわされず、運命は自分で切り開くものというメッセージも十分につたわってきます。

 昔話には、賢い女の子が大活躍するものもありますが、最後はきまったように結婚して幸せに暮らしましたとあって、物足りません。しかし、この物語で、苦しんでいる人を救おうと旅立つ最後は、賢いだけではできません。次にはどういう冒険がまっていたのでしょうか。


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