カナリア王子/イタロ・カルヴィーノ・再話 安藤美紀夫・訳/福音館文庫/2008年初版
病気になって仕事ができなくなり、食べるものもなくなった石工が、海岸の岩の上にみつけたのは一匹のカニ。
こどものおもちゃにもってかえると、翌朝、カニはたまごをうんでいました。よくみると、それは金でした。ふしぎなカニは、次の日も次の日も金のたまごをうみ、石工は瞬くうちに、金持ちになりました。
ここでおわれば万々歳ですが、ここは出だしの部分ですから、カニの秘密を知った仕立屋が登場します。
仕立屋はどんな方法でカニを手にいれようとするか。
仕立屋には息子が二人とむすめが一人。仕立屋はむすめを、石工のむすこと結婚させることを申し出ま。
そして、むすめに持参金をつけるので、結納にカニを出すよう条件をだします。
結納にもらうまで、まちきれず、カニをもちだした仕立屋が、からだを残らず調べると、「カニの甲羅を食べるものは、いつか王になり、足の方を食べるものは、毎朝、枕の下に、ぎっしりお金の入った財布が見つかる」と、はらに書いてあるのを見つけます。
仕立屋は自分の息子二人に食べさせようとしますが、じつは食べてしまったのは石工のむすこ。
カニがなくなって結婚はとりやめ。石工の二人のむすこは、自分たちがひきおこした大騒ぎにびっくりして、旅に出ます。
昔話では、旅にでないと次へすすみません。
弟が食べたのはカニの足。とまった宿屋でお金の入った財布がでてきて、宿屋のおかみさんが、ぼくたちをためすために、こんな財布を置いたと思い、おかみさんに財布をだすと、おかみさんは、わかっているふりをして財布を受け取ります。
二度三度同じことが続くと、さすがの弟も財布は自分のものだときがつきます。
さて兄弟は別々の道をいくことにし、弟は兄に小さな刀をもっていくように話し、刀が曇ってきたら、死んだものと思って泣いてくれと言い残します。
兄のほうも、弟に水の入った瓶をあげて、水が濁ったら死んだものと思って泣いてくれといいます。
兄弟が分かれるとき存在を証明するものを残していくのは、これもよくあるパターンです。
兄が食べたのはカニの甲羅で、ついた町で、ハトが頭にとまり、兄はすぐに馬車と軍隊と音楽隊にかこまれて宮殿に案内されます。大臣たちがハトが頭にとまった人を王さまにすることにきめていたのです。
一方、弟のほうはそう簡単にいきません。
兄とは別の町で王女とトランプすることになった弟でしたが、何回やっても王女の勝ち。そのたびにお金をはらいますが、お金はいつまでもなくなることはないので、不審に思った王女が魔女に尋ねます。
王女は、魔女のいうとおりにして、お金をうみだす財布を手に入れます。
昔話でも、トランプはお金をかけるので、博打だったんですね。
たちまち貧乏になった弟が、腹が減るのに耐えきれず、手当たり次第に草を食べると、ロバになってしまいます。ロバなら草を食べていればいいんだなと、キャベツによくにた草を食べると、もとの人間にもどります。
二つの草をうまく使えば、運も開けるかもしれないと思った弟は、一計を案じ、王女をロバの姿にかえることに成功します。
弟はロバに、普通の二倍もある石をせおわせたり、ビシビシ、棒でたたきながら歩かせます。
動物虐待は、いつの時代にも問題でしょうか。弟は訴えられてしまいます。
兄である王さまと再会することになった弟は、水の入った瓶をとりだし、自分が弟であることを話し、それからはこの国の総司令官になって、二人一緒に暮らします。
タイトルもわかりやすい昔話です。
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