どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

奈良の早起き・・奈良

2022年04月17日 | 昔話(関西)

          奈良のむかし話/奈良のむかし話研究会/日本標準/1977年

 

 むかし、奈良のシカは神さまの使いやゆうて、えろう とうとい生き物。もしシカを殺しでもしたら「石子づめ」にされることになっていたという。「石子づめ」というのは、生きたまま土の中にうめられて、おまけに石をぎょうさんのせられるのやな。

 あるとき13になる男の子が、寺子屋で習字の稽古をしているとき、シカが習字の紙をムシャムシャ食べているのをみて、びっくりさせようと、文鎮を投げると、運悪くシカが倒れてしまい、生きたまま土の中にうめられてしもうた。こんなことがあるので奈良の人は、シカが死んでいるのを見たら、えらい怖がっていた。

 ある冬の寒い日、春日神社にいく参道のお店の前に、シカが死んでるやないか。びっくりしたお店の人は、これは大変と、シカをひっぱって隣の家の前に置いた。しばらくして、隣の人が起きだして店の戸を開けるとシカが死んでいたので、この人もえらいびっくりして、この人も隣の家の前にそのシカを置いた。その隣の人も、また隣の人もみんな同じようにした。

 それでいちばん遅くまでねている、ねぼうすけが目をさますと、その家のまえに死んだシカがいたので、役人がやってきて連れていかれたという。

 こんなことがあったので、むかしから奈良の人は、みんな早起きという。

 

 「死体」をたらいまわしにする話は外国にもありますが、結末はさまざま。


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