話はめぐる/聞き手から語り手へ/ナショナル・ストーリーテリング保存育成協会・編 佐藤涼子・訳/リブリオ出版/1999年
エリザベスは12歳。顔はそばかすだらけ。ある日、そばかす取りクリームの広告を見て、お小遣いで買える値段と知って注文。広告には「濃い茶色の包装紙」で届くと書いてありました。三週間郵便トラックの到着に合わせて、一日をやりくりし、包みを待った。家族の誰かが包みを受け取ったら、この先ずっとからかわれることがわかっていたからだ。ついに包みが届くと、魔法のような品物に興奮しそのクリームを使う気になれなかった。
つぎの朝、鏡に映った顔を見て、クリームをぬってみた。その日、夏の間はほとんどそうしているように、兄やいとこたちとタバコ畑の草取りに出かけた。クリームを塗って日にあたると、ピンクですべすべの肌になるかわりに、そばかすはもっと増えてもっと濃くなるというのに。
その日の終わり、家に戻ると、みんなが顔を見て、「エリザベス、お前、前からこんなにそばかすがあったっけ?」といわれ、泣き出して、夕飯も食べず、外の屋根のある井戸のそばにしゃがみこんで泣きじゃくった。エリザベスが祖父に、そばかす取りクリームを注文したことを話すと、祖父は笑わず、「満月に死んだ黒猫を埋めても同じことじゃろう。」というようなことを口にしただけだった。エリザベスは、どんなにそばかすが嫌いか、ジャネット・エリザベスと自分をくらべて、どんなに劣っているように感じているかを話した。祖父はびっくりして、「だがな、エリザベス。いろんな花があって、どれもみんな美しかろうが」というが、エリザベスは、「そばかすがある花なんてみたことがないもん!」と言って、ドアを閉めた。
泣きながら寝入って、つぎの朝、はれぼったい目を開けたとき、枕の上に、オニユリの花が目に飛び込んできた。当時住んでいた山岳地帯で、それを見かけたことはいちどもなかったが、たしかに祖父がそれをおいてくれたのだと、母が後で教えてくれた。
物語はここでおわるが、オニユリの花を知らないと、はてな?と思う。そばかすに悩む孫に、そばかすがある花オニユリを何も言わずに置いて、そばかすがあるのが恥ずかしいことではないんだよと諭す祖父のふるまい。
オニユリは、確かに奇麗で、黒のそばかす模様があります。
子どもや孫が、なにかに悩んでいるとき、そっと声をかける存在でありたいものです。