どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ことのおこりは ぽたぽた から・・インド

2025年02月07日 | 昔話(アジア)

   現代アジア児童文学選5/アジアの笑いばなし/ユネスコ・アジア文化センター・編 松岡享子・監訳/東京書籍/1987年

 

 気むずかしやの老女が、小屋のあちこちで、ぽたぽた雨もりして、「このぽたぽやのやつ! ほんとうにもう、こいつからのがれる道はないのかね!」「ああ、このぽたぽたときたら、わたしをころす気だよ!と、わめいていると、小屋の壁で雨やどりをしているトラが、それをききつけました。
 トラは、「ぽたぽたってなんだろう。こんなすごい音をたてるんだから、おそろしい生き物に違いない」と、おそろしくなりました。

 トラが、なんだかわけがわからないでいると、そこに通りかかった焼物師のボレナスが、おもいっきりトラを蹴っ飛ばすと、トラの両耳をにぎって、「あるけ!さもないと、骨をへしおるぞ!」と、どなりました。焼物師は、ロバに逃げられて虫の居所が悪かったのです。

 トラは、ボレナスを、「おそろしい ぽたぽたにちがいない。」と、思い、そのまま焼物師のあばら家にいき、柱に縛りつけられてしまいます。朝、おかみさんが外に出てみると、トラがいることに気がつき、おおさわぎになりました。おかみさんもボレナスも、トラが、家に入らないように戸口にベッドとトランクをおしつけました。

 さわぎを聞きつけて、村びとがボレナスの家の前に来て、トラがつながれているのを見ると、仰天し、ほかに人に知らせました。おびえたトラは、とうとう綱を食いちぎって。ジャングルに 逃げかえりました。

 恐怖が去って、元気を取り戻したボレナスは、あつまってきた人びとに、「蹴っ飛ばしたり、ひっぱりしたどころか、耳をつかんでひっぱってやったんだぜ」と、自慢し、高笑いしました。

 事件の噂はひろまって、王さまの耳にもはいりました。ボレナスの武勇!を知った王さまは、軍の大将に任命しました。ところがそうそうに、となりの王が、八万人の軍隊をひきつれて国境にやってきました。総指揮官に任命されたボレナスは、おそろしさに、胸が波うち、どうしていいかわかりません。

 おかみさんに相談すると、「わたしが、馬にしばりつけてやるから、あとは神さまにおまかせするんだね」と、いいました。

 おかみさんと、四人の召使が、ボレナスを王さまの馬にのせ、しっかりしばりつけ、おかみさんは縄の一方のはしを馬のしっぽにむすびました。そんなことをされては、馬は気持ちが悪くてたまりません。急にあと足で立ちあがり、全速力で駆け出しました。ボレナスは、馬がまっしぐらに敵地にむかっていることに気がつき、「やめろ、とまれ!」とさけびました。このとき、道のはしからパンヤンの木の気根がたれさがっているのが見え、手をのばしてそれにつかまろうとしました。けれども、馬の勢いがあまりにもつよかったので、根は枝から離れ、ボレナスの手ににぎられたまま、ばたばたとゆれはじめました。馬は、一直線に敵地に向かって突進しました。敵の兵隊は、木の根をふりまわして、大声でせまってくるボレナスを見て、「ありゃ悪魔だ!」「敵は悪魔の軍隊をもっているんだ!」と、口々に叫び四方八方ににげだしました。

 一人で敵軍をぜんぶ撃退したことになった勇敢な焼物師の話は、いまでも人びとのあいだでかたりぐさになっています。

 

 後半はよくある武勇談。しかし、「雨もり」を怖いものと勘違いする話と一緒になっているのは、あまりないかも。


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