話はめぐる/聞き手から語り手へ/ナショナル・ストーリーテリング保存育成協会・編 佐藤涼子・訳/リブリオ出版/1999年
ある百姓が手に入れた指輪。この指輪は願いをかなえてくれる魔法の指輪。ただかなえてくれるのはたった一つ。ところが家に帰る途中、宝石商に取り換えられてしまう。そうとは知らない百姓は、たった一つの願いに慎重になって、妻と努力を続け、何年かすると結構な金持ちになる。そのあとも何度か指輪に願いをしようとするが、そのたびに時間はたっぷりあるし最も良い考えは最後にやってくると願うことなく、そのまま二人とも死を迎える。
あとがきで、訳者は、昔話をアレンジしたものとしてこの話を紹介している。ただどこかで読んだ記憶があったので調べてみると、岩波少年文庫「ふしぎなオルガン」の「魔法の指輪」の内容そのもの。この話は、作者のルヒャルト・レアンダ-が、独仏戦争中(1870~71)に、ふるさとに残してきた子どもたちのために書き送ったもののひとつ。
文庫に収録されている「ふしぎなオルガン」も、よく語られる話なので、間違えられることはなさそうだが・・。もっとも百年以上前の著作なので、いずれ昔話とされてもおかしくはなさそうだが、作った人がはっきりしているからには昔話にはならない。
以前テレビドラマで「校閲」という言葉があった。校閲はただたんに字の間違いなどをチエックするだけでなく、書かれた事実関係のチエックを行うことも意味していた。とすると出版社の校閲・校正はどのようになされているのかも気になるところ。
グリムの「死神の名付け親」は、死神が赤ん坊の名付け親になる話なので、まったく内容とはことなるタイトル。これはたんなる校正ミスなのか。もっともウイキペディアでも、このタイトルで項目になっている。