どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

はらぺこライオン・・インド

2015年10月09日 | 絵本(昔話・外国)
はらぺこライオン  

    はらぺこライオン/作:ギタ・ウルフ 絵:インドラプラミット・ロイ 訳:酒井公子/アートン/2005年

 

 どこかぬけた感じのライオンが、スズメ、こひつじ、シカを食べようとして、だまされてしまいます。

 副題にインド民話とありますが、汽車やバスがでてきますから、創作なのでしょう。

 すずめがライオンに食べられそうになったら、飛んで逃げればいいと思うと、すずめは「おいしいあまいお餅をつくるためにお米をついばんでいるのです。そのためには砂糖にバナナ、ミルクにバター、それにつぼとなべ たきぎ」をもってきてくださいといいます。
 ライオンがいわれたものを集めようとすると汽車がやってきて、その汽車をとめて大声をあげますが、汽車はスピードを上げて、そのままいってしまいます。

 騙されながら楽しめます。

 絵の感じがほかの絵本と何かちがうとおもったら、お米のもみ殻と木綿の繊維から作られた再生紙を原画に使用し、ハンドシルクスクリーンの技法で絵本が仕上げられているという解説がありました。

 細川紙がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、ついこの間。こうした紙もあるのかと再認識させられました。


干し柿

2015年10月08日 | 絵本(自然)
干し柿  

    干し柿/文・写真:西村 豊/あかね書房/2006年初版

 

 秋は果物もおいしい季節。

 何千個もの柿が干されている風景に圧倒されます。

 そしておいしそうに干し柿をほおばる子どもの顔をみると、おもわずほほえましくなります。

 干し柿をつくる工程が丁寧に紹介されている写真絵本です。

 干し柿づくり名人のおばあちゃんはいいます。
 「ケーキもチョコレートもなかったから、干し柿がだいじなおやつだったんだよ。むいた皮も干して、おやつ代わりに食べたりして、大切にしたんだよ」

 裏表紙に楽しい発見があります。
                   

 富有柿の種をポットにうえて大事に育て、引っ越しをきに、植え替えた柿。ことわざのように、7年たってからでしょうか、昨年はじめて実がなりました。
 今年は一本の木で何百個もなりましたが、そのほとんどが落下。



 今年は桃も4個ぐらいとれました。ビワも7,8年たっていますが、こちらのほうはまだまだのようです。 梅やリンゴ、無花果など実のなる木をうえています。


 この絵本をみて、干し柿に挑戦してみようと、柿のかわをむきました。


安房さんの物語のお店

2015年10月07日 | 安房直子

 安房さんの物語に出てくるお店。どれもこじんまりしていて、ひとくせもふたくせもあるお店です。とりあえずあげてみました。


  「三日月村の黒猫」     洋服屋
  「ライラック通りの帽子屋」 帽子屋
  「海の館のひらめ」     レストラン
  「遠い野ばらの村」     雑貨屋
  「ふしぎな文房具屋」    文房具屋
  「オリオン写真館」     写真館
  「カーテン屋さんのカーテン」カーテン屋
  「ひぐれのお客」手芸店

  「魔法をかけられた舌」   レストラン
  「空にうかんだエレベーター」子ども服
  「青い花」         かさ屋
  「海の口笛」        かけはぎ屋(職人といったほうが適当か)


うぬぼれ鏡

2015年10月06日 | あまんきみこ

    うぬぼれ鏡/あまんきみこセレクション4 冬のおはなし/三省堂/2009年


 中学三年生の節子は、しんせきの叔母が「この家にくると、自分の顔がきたなく見えてこまるわ。うぬぼれ鏡を、ひとつぐらい、おいてらっしゃいよ。」といったのをききとがめます。うぬぼれ鏡ってなにと聞くと「見る人をきれいにうつす鏡のことよ。くもっているような鏡で顔をみると、年とった女でもわかく見えるからね」というこたえがかえってきます。節子の母親は、家じゅうの鏡という鏡は、いつもしみひとつないように、鏡をたいせつにしていたのです。叔母のことばは、それっきり忘れてしまうのですが・・・。

 ところが一年後、母親が胃癌で入院しますが、もう手をつけようもなくひろがっていて、そのまま傷口をふさいだだけでした。自宅で療養をはじめますが、母親は流動物しかとおらなくなり、細く細くやせ細ってしまいます。

 母親は、もう鏡はいらない、自分の顔をみるのがこわいといいます。
 節子は、もういちど母に鏡をみせてやりたい、それも真実をうつす鏡でなく、叔母の言葉にあったうぬぼれ鏡を思い出し、あちこちの店でことわられながらも、小さな店で鏡を見つけますが・・・。

 老いを感じるとそれだけで鏡と向き合うことがこわくなりますが、節子の母親は余命が長くないというのを感じていますから、どんな気持ちだったでしょう。

 鏡はみたでしょうか?


 死がテーマになっているだけに、複雑な感情におそわれます。ほかのテーマだったら別のうけとめかたができそうですが。

 聞いてみたい、そのあとでどんな感想があるのか知りたい話です。

 ためしに、話をするとしたらどうかと何回も読み直してみましたが、男性には到底無理なようでした。


悪い本

2015年10月05日 | 絵本(日本)
悪い本  

    悪い本/作:宮部 みゆき 絵:吉田 尚令 編:東 雅夫/岩崎書店/2011年

 

 このところ宮部みゆきの小説に何冊か目をとうしています。

 ときどきテレビドラマの原作に名前がでてくるのがきっかけ。現代もの、時代物どちらも面白い。図書館で借りる人が多いというのも人気のほどがうかがわれます。

 しみじみとした人情と現代に潜む闇をえがいていてあきることがなく、当分は続きそう。

 まあ、ありそうにもないが、童話をかいたらどんなふうになるのか興味がありました。

 ところが、今朝のNHKの番組で、宮部みゆき作に、絵をかかれた吉田 尚令さんのインタビューが放送されていました。いつも聞き流しているのですが、絵本というのでさっそく検索してみました。

 4年前の出版です。

 想像だけでそれはないだろうと思っていたのですが、出版社も話題をよぶだろうとおなじようことを考えたのかも。

 話題性では、村上春樹訳の絵本も巷の評判をよんだのかもしれませんが、こちらはたまたま手にとっただけのことでした。
 
 こわそうな絵本ですが、どんな感想がよせられているのか知りたくて、とりあげてみました。
 アナウンサーが一部紹介していたのでこれは?と思いましたが、やはり受け止め方がむずかしいようです。

 残念ながら、利用している図書館にはありませんでした。

              

ぱんぷくりん 亀之巻

    ぱんぷくりん/作:宮部 みゆき  絵:黒鉄 ヒロシ/PHP研究所

 もう一冊の絵本がありました。


三日月村の黒猫

2015年10月04日 | 安房直子

      三日月村の黒猫/安房直子コレクション4 まよいこんだ異界の話/安房 直子/偕成社/2004年 1986年初出


 同じコレクション4の「丘の上の小さな家」とは対照的な物語。

 丘の家では、母親と少女ですが、「三日月村の黒猫」では、父親とうまれてまもなく母親をなくした少年です。
 父親が借金のため朝逃げ?し、少年は一人残されるが、少年を助けてくれたのは、ネクタイをした片目の黒猫でした。三日月村には、黒猫の帰りをまつ、エプロンをかけた奥さんがいます。
 丘の家でも主人公の話し相手になるのは猫です。

 丘の家では、主人公がレース編みを習ったレース学院からかえってくると、40年がたっていましたが、三日月村では、ダムの湖底に沈んだまぼろしの村で、ボタンづくりを覚えますが、もとにもどっても歳を重ねることはありません。

 二つの作品には、未来と過去が交錯して、同時に読むと一層の魅力があります。

 たくさんの借金をかかえて、三代続いた老舗の山本洋服店をつぶしてしまったお父さんが、おまえのことは三日月村のおばあさんに頼んでおいたと言い残して、どこかへ行ってしまいました。残されたのは12歳のさちお。

 借金取りにおわれ、途方にくれるさちおのもとへ、おばあさんの使いでやってきたという黒猫があらわれます。

 黒猫は、たったひとつ残された古い手まわしミシンを使って、洋服の寸法直し、縫い直し、ボタンのつけかえなど、修繕をはじめるよういいます。
 なんとか洋服店が軌道に乗り、どうやらこうやら暮らしていくことができるようになったある日、十五年前にこの店で作った洋服のボタンかけをたのまれ、家じゅうのなかを探しますが同じボタンはみつかりません。そこで、ボタンを作った、おばあさんのいる三日月村にいくことに・・。

 ボタンをさがしているとき、みつかった四角いかん。そこには森の夜の林の絵があって<三日月村のボタン>と書かれてありました。この絵をずっとみつめていると、林の奥にあかりがともり、いつのまにかさちおは夜の林のなかに立っていました。

 ここでさちおは、ボタンづくりをはじめます。

 首都圏のみずがめになっているダムですが、ダムをつくるなかで、どのくらいの村が湖底に沈んでいったのでしょうか。豊かさのなかで、何かを失ってきてはいないのでしょうか。
 生まれ育った村をおわれた人々にはどんな未来があったのでしょう。

 湖底に沈んだ村への鎮魂歌のようです。

 さちをのおばあさんは村での暮らしを望んで、猫の夫婦とボタンづくりを再開します。

 けっして入ってはいけなといわれた二階の部屋。しかしさちおはどうしてもきになって、のぞくだけならいいだろうとかぎ穴に目をやります。そこには<外>がひろがって山の谷間にある草原。鳥たちがさえずり、たくさんの花。じつは工房でつくられたボタンが、みんな本物にかわっていました。十何年も前の三日月村の景色でした。(昔話「みるなの座敷」では、タンスをあけると春夏秋冬の景色がうかびあがってきます。)

 黒猫は「わたしたちは、むかしの明るかった三日月村をなつかしく思っています。だから二階のへやに、ほんのひとかけら、むかしの三日月村をこしらえて、だいじにだいじにしているんですよ」といいます。

 ぼくもはいってみたいというさちおに、へやに入ったらへやのとりこになってこの家から動けなくなると黒猫は忠告しますが・・・・。

  さちおが三日月村にいくとき、ふくろう、シラカバの木の歌
  朝つゆのボタンをつくるときのさちおの歌、ふくろうの歌
  朗読のときは、どんな風にうたうのでしょうか。

ー三日月村のぼたんづくりー
 三日月村のボタンの着いた服を着たひとは、なんともいえず、いい気分になれます。春の山の緑を歩いているみたいな、秋の林の中で落ち葉の風にふかれているみたいな、ときには耳に鳥の声が聞こえてきたり、谷川のせせらぎの音が聞こえてきます。

 花、木の葉、虫、鳥のボタンなどがありますが、花のボタンはどうでしょう。リスたちがつくるのは、きすげ、すみれ、ふでりんどう、野ばら、山ゆり、まつむし草など。
 木の葉のボタンは、葉脈のひとつひとつまで彫られています。

ーおばあさんの家ー
 <三日月村ボタン工房>の木の看板がかかって、昔 大家族で暮らしたことを思い出させるどっしりした古い大きな家。しかし、今はおばあさんと猫の二人暮らしです。

 大きなストーブにはおおきな鍋がのせてあります。カーテンは緑色、壁には木でできた壁掛け、二階に上がる階段の下には古いオルガンがひっそりおかれています。いまこのオルガンをひいているのは黒猫でした。


もんくやのさかな・・セネガル フラニ族

2015年10月03日 | 昔話(アフリカ)

  もんくやのさかな/オクスフォード 世界の民話と伝説10アフリカ編/講談社/1978年改訂



 池に住んでいたほかより大きな魚が自分の大きいことを自慢していた。

 ほかの魚から「あなたのように、おおきくえらいかたは、大きな川にいるべきですよ」といわれ、大雨の時、池が川とつながったとき、川に泳いでいく。

 ところがそこにいるのは自分より大きな魚ばかり。大ナマズから逃げ出した池の魚はようやくのことで元の池でくらすことに。


 「井の中の蛙大海を知らず」の魚版といったところか。
 このパターンの昔話、もっとあってもよさそうだが、ありそうでない。
 
 この話、だれでも自分のもっているもので、まんぞくしなければいけないと結んでいるのですが・・・。
 マイナスイメージと何かうまく利用されそうなところ。


よわむしらいおん

2015年10月02日 | 絵本(日本)
らいおんえほん(1) よわむしらいおん  

  らいおんえほん/よわむしらいおん/作:八木田 宜子 絵:長 新太/徳間書店/2002年初版

 

 ”ぼく”が朝、目を覚ましたら、となりに寝ていたのがらいおん。
 でもぜんぜんびくっりしません。
 朝ごはんにアイスクリーム!を食べて・・・。

 おやじみたいな らいおん。

 らいおんがおなかがいたくなって、やってきたお医者さんの注射器のおおきいこと。
 らいおんでなくてもびっくり仰天です。

 お子さんたちの反応は良好のようで、大人のうけとめかたとは、少しちがうようです。


丘の上の小さな家

2015年10月01日 | 安房直子

     丘の上の小さな家/安房直子コレクション4 まよいこんだ異界の話/偕成社/2004年 1989年初出


 ちょっぴり、ほろにがさを感じさせる物語。

 13歳のかなちゃんが家を留守にしたのは、クモのレース学院にいっていたほんの7,8時間のはずだったのですが、家に帰ってみるとお母さんは亡くなっていて、40年がたっていました。
 クモがみごとな巣をつくっているのをみて、この世で一番美しい模様を編んでみたいとレース学院に入学したかなちゃん。

 家に帰るとまだらの猫がむかえてくれますが、すばらしいレース編みをつくると、町の評判になって予約が30枚もはいります。
 しかし、あまり騒がれるので、やがてお客をみんなことわり、猫を話し相手にすごしますが、春になるとレース編みを教えてくださいと、むかしのかなちゃんを思わせる13歳の少女がやってきます。
 その少女もレース学院にはいりたいと尋ねますが、かなちゃんは首をふります。
 そしてかなちゃんが少女にいったことは?

 木もれ陽編みと呼ばれるレース編みを身につけるのは、40年の歳月をようし、かなちゃんはうしなったたくさんのことを考え、きらめく日々を、むざむざ捨ててしまったことを後悔します。

 しかし、猫の「いつまでもかなしんでいるのはやめましょう。新しい生活をはじめましょう。ぼくはあなたの力になりますよ。」という言葉にうなずいて、あたらしい生活をはじめます。
 きっかけをくれた猫は、その後もかなちゃんのよき話し相手になります。

 かなちゃん、いつか自分が花嫁になる日のためのレースを編んでいるのですが、13歳で花嫁になる日のことを考えるのは、男にとっては想像がつかない。結婚願望か・・ハアア。

 青春の一番輝く時期を失ったかのようにみえるかなちゃんですが、ぎらぎらする青春のかわりに、じっくり味のある50代をむかえられたのは、かえってよかったのかもしれません。


<丘の家の風景>
 かなちゃんの丘の家を目に浮かべてみます。
 ゆるい坂道をゆっくりのぼっていくと、赤い煙突のついたかわいい家がみえます。寝室の入り口にはりんごのアップリケのあるスリッパ、部屋のなかには小さな木の椅子。
 ストーブの上では、野菜のシチューやリンゴのジャムがコトコト煮えています。
 そして、おやつは、星や三日月や木の葉のかたちをしたビスケット。
 水は井戸端でポンプをおしながらくんできます。

 お母さんが元気なころは、かぼちゃが植えられていました。小さな畑にはそのほかの野菜も植えられていたのでしょう。

 春には梅、桃、桜の花が咲きますが、この木もお母さんが残していってくれたもの。
 
 そして夏のおわりには、赤、白、うすもも色のコスモスが咲きます。コスモスはどのくらいのおおきさだったのでしょう。

 そういえば、昔、母親がストーブで料理をコトコト煮込んでいたのを思い出しました。
 
 物語を楽しんでから

 あれ、かなちゃんは、お母さんと二人暮らしか?
 父親は?
 母親は、神隠しにあったように消えた娘を探したのか
 何かメッセージを残していなかったのか?
 かなちゃんの友達はどうしたのか?

 こうしたものを全部捨象するのが、ファンタジー?
 
 などなど余計なことがうかんできます。

 夏の日、朝露に輝いているクモの巣。こんなにも細かいのかと目をみはります。

 このお話、クモの巣をみて紡ぎだしたのでしょうか。
 普段何気なくみているものから、こんな着想がうまれるとは!

 小雨の日、コキアのクモの巣で、水玉がキラキラしていました。