どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ふぶきのみちは ふしぎのみち

2021年01月15日 | 絵本(日本)

    ふぶきのみちは ふしぎのみち/稲村 有希子/アリス館/2020年

 

 雪の朝、みちるは おねえちゃんと 学校にむかいます。

 ビュービュー吹きつける雪。うまくまえにすすめません。

 おねえちゃんが みちるに 声をかけます。

 「いち・に けむし」「いち・に いもむし」「いち・に ねずみ」「いちに・に もぐら」「いちに・に うさぎ」と声をかけながら歩いていくと、急にしろくまが あらわれ、みちるは びっくり。

 みちるが はしってにげようとすると しろくまは しっつこく ついてきます。

 いつのまにか おねえちゃんと はぐれてしまいました。

 しろくまと歩いていると アザラシやクジラもあらわれました。

 丘を登りはじめると ペンギンたちも のぼっています。ゴー ゴー ビュー と激しくなる吹雪に心細くなったみちるが、「おねえちゃーん・・!」とさけぶと、しろくまが ぎゅっと みちるを だきあげて「いち・に おばあさん、いち・に おじいさん いち・に おねえちゃんと」と、ポーンと みちるを ほうりあげると たかく たかく とお~く どさっ。

 おねえちゃんがみつかって ふたりは こんどは しっかりと 手をつないで 学校へ むかいました。 

 

 ことしはいつもより大雪で、道路で何時間も車が立ち往生してしまいました。ほどほどの雪ならともかく、平年の三倍以上となると、雪かきも一苦労。

 大雪になると、前後左右が見えなくなって 不安におそわれますが、であえたのが しろくま、クジラだと 楽しくなります。

 繰り返す かけごえで 足が 進みます。


先見えゴボーン・・イギリス

2021年01月14日 | 昔話(ヨーロッパ)

        かじ屋と妖精たち/イギリスの昔話/脇明子:編訳/岩波少年文庫/2020年

 

 昔、ゴボーンという男が、息子のジャックに羊の皮を一枚渡し、これを売って、皮と代金をもって帰るよう言いつけました。

 ジャックはでかけましたが、皮を受け取らずに代金だけをくれる人など、どこにもいませんでした。次の日もおなじで、三日目に一人の娘が川っぷちで洗濯しているのが見えました。

 娘から声をかけられ事情を話すと、娘はすぐに始末をつけてあげるからと、羊の皮を受け取ると、川で羊の皮を洗って毛を刈り取って、その代金を払い、それといっしょに皮を返してくれました。先見えゴボーンは、娘の賢さに感心し、ジャックと結婚してくれるようたずね、ふたりは結婚しました。

 それからまもなく先見えゴボーンは、ある王さまから、だれもがはじめて見るようなすばらしいお城を建ててくれと頼まれ、息子を連れて出かけていきました。

 お城は立派にできあがり何千人もの人たちが見物にあつまってくるほどでした。ただ大広間の天井の仕上げはのこっていました。ところが、家事を取り仕切っていたおばあさんが、ほかの王さまにもおなじぐらい見事なお城を建てるのではないかと心配し、明日二人を殺そうとしているのだと忠告しました。

 次の日、王さまが城にやってきたとき、ゴボーンは、道具を一つ家に忘れてきて、仕上げができないので、ジャックを取りに帰らせますといいます。

 王さまは「それはいかん。だれかほかのものを」といいますが、ゴボーンは、用が足せないのでどうしてもジャックでなければいけないといい、王さまの息子が使いにでることになりました。

 ゴボーンは王子に、おかみさんにあてた手紙をわたしました。手紙には「使いのお方に、ヒンマゲテキチッを」とかいてありました。

 おかみさんは、王子にむかって大きな道具箱のなかからヒンマゲテキチッをとってくれるよう頼みました。そして王子が箱の上に身を乗り出したとき、おかみさんは王子の両足をつかむと、箱の中に放り込んで鍵をかけてしまいました。

 それから、ゴボーンとジャックは、王子の釈放を条件に無事に家に帰りました。

 

 このほかにも、おかみさんの賢さを示すエピソードがありますが、おかみさんが「ヒンマゲテキチッ」という手紙で、ゴボーンとジャックの危機をなぜ知ることができたのかが不明なのが残念です。


おおにしせんせい

2021年01月13日 | 長谷川善史

       おおにしせんせい/長谷川善史/講談社/2019年

 

 五年生になって一週間。今日の一時間目は国語。しかし新しい担任の おおにしせんせいが「きょうは いちじかんめから ろくじかんめまで 図画工作」といいだし、みんなにわたしたのは、ふとい筆一本、パレット替わりの下敷き、バケツ。

 学校の中で自分の描きたいところを選びなさいといわれ、まっさん、こうちゃんとぼくが目をつけたのは廊下。

 「ここやったら すぐ おわる。あとのじかんは ちゃんばらごっごや」と、すぐにかきあげ、ちゃんばらごっこ していると ごつい おおにし先生の姿。

 これは かみなりが 落ちるかと 思うと「このろうか、その ちゃいろに みえますか。えのぐ そのままの ちゃいろい いろか。よーく みてみ。ろうか さわってみ」と先生。そういわれて、ぼくが ろうかをさわってみると さいしょは つめたかったが、しばらくすると ちょっと ぬくく かんじた。耳を近づけてみると、しずかやねんけど がっこうのおとが きこえて においをかいでみると あぶらのにおい、ほこりのにおい、みんながあるいた におい。

 給食のパンを食べながら、廊下のことを かんがえて さっきの廊下に もどると さっきの廊下と ちがってみえた。黄色に見えるところは 絵具の黄色と違う。あおくみえるところ、あかるくみえるところ。もう 絵具の 茶色やなかった。ぼくは ぼくが かんじる 廊下をかきはじめた。

 先生は絵をかく前に「からだが うごいたら はらが へる まえに、こころがうごくんや。よーく みて えがくんや」といい、ぼくが 絵をかきおわると、「よっしゃ! きがついたな。えのぐの ちゃいろと ちがいますやろ。いろんな いろがかさなって それがほんまの、あんたの ろうかや」「こころが うごいて はらが へったんや」と、声をかけました。

 二ページにわたる廊下の微妙な色使いが圧巻です。

 

 長谷川さんの担任だった先生がモデル。学校は木造校舎で、木の廊下であればこそ描けた絵だったのかも。

 昭和にはまだ先生の創意工夫がいかされる余裕があったように思いますが、現在の教育現場では、一日すべてを図画工作にあてるというのは考えられません。

 自分の将来を左右するほどの先生との出会いが 子どもたちに ありますように。


ホアン・ソンソとペドロ・アニマル・・ドミニカ

2021年01月12日 | 昔話(南アメリカ)

          ラテン・アメリカ民話集/三原幸久:編・訳/岩波文庫/2019年

 

 ホアン・ソンソは仕事にいくとき、ばかの兄に、留守中母親をぬるま湯に入れ、昼食には卵を食べさせ、よく看病するようにいいつけておきました。

 ところが兄のペドロは、湯をぐらぐらわかし熱湯のなかに母親を入れて死なせてしまいました。

 ホアンは母親の死体をロバにのせ、神父が教会で告解を聞いているところへロバを放ちました。

 神父は母親に二、三度声を掛けましたが、何の返事もしないので腹をたて、母親に平手打ちをくらわせると、母親はロバから落ちました。

 するとホアンがやってきて「あなたはわしの母親を殺したな、さあいっしょに警察に行こう」といいました。神父は「袋にいっぱい銀貨をあげるから警察にだけは黙っておいてくれ」と頼み、ホアンも承知してお金の袋をもらいました。

 つぎに、ホアンは母親の死体をロバに乗せ、馬をたくさん持っている地主が馬を放している囲いに、ロバを放ちました。すると何匹もの馬がロバを追い回し、ロバの背から母親の死体が落ちてしまいました。

 ホアンは地主に「旦那の馬がわしの母親を殺しました」と談じ込み、ここでもたくさんのお金を手に入れます。

 

 死体を利用して大金持ちになるのは、死者を冒涜していますが、こうした類話も多いというのは、どう理解したらいいでしょうか。


こけこっこー

2021年01月11日 | 絵本(日本)

    こけこっこー/林 木林・作 西村 敏雄・絵/すずき出版/2011年

 

「こけこっこー」と、にわとりくんが なくと みんなが おきてきて 一日がはじまります。

「すごいねー、にわとりくん。みんなをおこせるなんて」「ぼくたちも みんなを おこしたいよー」と鳥たちが、つぎのあさから 挑戦です。

「こけぽっぽー」

「こけほーほー」

「こけかーかー」

「こけかっこー」

でも、みんなはグーグー。にわとりくんも「こけぐーぐー」と 朝寝坊。おひさまがおこって・・・。

おうむくんが「こけこっこー」と鳴いても、だれもおきませんでした。

鳥の鳴き声入門。みんなの合唱が聞こえてきそうです。

番外は「こけちゅんちゅん!」(裏表紙)。


真夜中のまほう

2021年01月10日 | 創作(外国)

    真夜中のまほう/文・フィリス・アークル 絵・エクルズ・ウイリアムズ 飯田佳奈絵・訳/BL出版/2006年

 

 村のそれぞれのやどやの看板には、マガモ、ライオンとヴァイオリン、人魚、ユニコーンが描かれていました。

 マガモは二百年もの間、看板の絵としてじっとしていましたが、ある夜、遠い「ウサギと猟犬のおやど」からきたウサギから真夜中の十二時の鐘が鳴るときだけは、だれでも動くことができるといわれ看板からぬけだします。生まれて初めて池で泳ぐのに少しづつ慣れてくると、モリフクロウがカエルやドブネズミ、魚をよんでくれました。

 モリフクロウは、「ここに巣を作って、わしらといっしょにいたらいい」といいますが、マガモは、看板の仕事にほこりをもっていて、これをことわります。そして宿にまつわる秘密を話します。昔泊まった一人の兵士が小包を宿の主人に頼んでいったが、その兵士はかえってきませんでしたし、宿の主人も、そのことはだれにも打ち明けないまま死んでしまいました。その小包は絵で、普通の絵のように見えますが、じつはその絵の下に、別のすばらしい作品が描かれているというのです。

 にわとりが鳴き始めるとほぼ同時刻に、マガモは看板のもとの場所に戻りますが、いつもとちがった方向におさまります。そのことに気がついたのは毎朝五時半きっかりにマガモの宿を通るダンでした。宿の主人ショートさんに知らせますが、ショートさんは、ばかげた話だと、相手にしませんでした。

 次の夜、モリフクロウがつれてきのは「ライオンとヴァイオリンのおやど」のライオン。ところがライオンはヴァイオリンはひけません。ライオンは、ご主人のハーストさんが、たくさんの借金をかかえていることを話します。宿がなくなったらライオンも仕事を失います。

 ダンが看板のライオンのしっぽが、看板の下に垂れ下がっているのに気がつき、ハーストさんに話しますが、寝ているところを起こされたハーストさんは怒鳴ります。ダンは、だれも自分をしんじてくれないので、がっかりします。

 次の夜、モリフクロウが人魚を、次の夜には看板に百五十七年ほどいたユニコーンを連れてきました。ユニコーンは、二人の男が手紙と地図をみながらマガモのやどの絵をねらっているのを聞いていました。明日の夜、公民館でダンスパーテイがあり、観光客も含め、とにかく村中の人が招待されている隙をねらっているようでした。

 みんなは協力して泥棒を追い払う相談をはじめ、モリフクロウが作戦をたてます。看板にはいるとき、いつもとちがう看板に入ることにしたのです。

 泥棒は看板をめあてに、あれこれ物色しますが、目的の絵は見つからないばかりか、井戸の底に落ちてしまいます。叫び声を聞いてやってきたのはダンでした。人がだれかをだますなんて、疑ったことがないダンは、泥棒たちから、誰かを呼んでここに閉じ込められているのを伝えてくれとお願いされますが、「だれもぼくの話なんか聞いてくれないよ」と、いいます。

 ダンはそこから去ろうとして井戸の壁の穴に気づきました。そこには四角いブリキの箱があり、中身をとりだしてみると、お札の束と、金貨、なにやら大事そうな書類もでてきました。

 今度は証拠があるので、自分の言うことを信じてもらえるとおもったダンがハーストさんに言うと、ハーストさんはたくさんの借金をかかえていましたから大喜び。

 次の日、ミッドナイト・イン・サイン・クラブ(というのはモリフクロウがつけた名前でしたが)のメンバーは、音楽会の前にひと泳ぎ。これをみていたのはダンでした。翌朝ダンはそれぞれの看板に話しかけて仕事に向かいます。

 

 村にしては宿屋が多いのですが、観光客や旅の途中の宿泊客が多かったのでしょうか。いずれも長年営業して由緒ある宿屋。宿屋が看板にある動物などの名前でよばれているのもユニーク。

 年寄りで知恵のあるフクロウ、話を信じてもらえない男の子ダン、人魚やユニコーンなど登場するキャラクターも多彩です。


あるヘラジカの物語

2021年01月09日 | 絵本(日本)

    あるヒラジカの物語/星野道夫・原案 鈴木 まもる:文・絵/あすなろ書房/2020年

 

 もうすぐ冬がやってくる広大なアラスカが舞台。星野道夫さんの写真(裏表紙)から紡ぎだされた物語。写真は、二頭のヘラジカの角が絡み合っています。

 メスを自分のものにしようとするオスと群れを守ろうとするオスの激しい闘い。ヘラジカの重さは800㎏。長い時間続いたであろう闘い。普通なら、どちらかが逃げ出せばおわる闘いですが、角が絡み合ってはずれなくなり、二頭とも、ぐったりして膝をつき、ぜいぜいと あえぐばかり。

 やってきたのはオオカミの群れ。オオカミがかみつき 食べはじめると、血の匂いにひかれてやってきたのは、冬眠を前にした巨大なヒグマ。

 ヒグマが立ち去るとオオカミ、オオカミが立ち去るとコヨーテやアカギツネ。クズリは足を加えていきます。動物がいなくなるとカナダカケスとワタリガラス。

 雪がおおいつくすと、カンジキウサギが、カリカリ 角をかじります。

 何度目かの春、アメリカタヒバリは、ヘラジカの骨のかげに巣を作り卵を産んで、そこから四羽のヒナが育ちます。


 たくさんの命が生きることにつながる壮大な物語です。数多くのなかの一冊の絵本ですが、できあがるまでのドラマがありました。

 星野道夫さんは、1996年取材のため滞在していた地で、ヒグマにおそわれて43歳でなくなられたとありました。また、星野道夫事務所のHPで、たくさんの動物写真をみることができます。


悲しみのゴリラ

2021年01月08日 | 絵本(外国)

   悲しみのゴリラ/ジャッキー・アズーア・クレイマー・文 シンディ・ダービー・絵 落合恵子・訳/クレヨンハウス/2020年

 

 ママをなくした子どものもとに、ゴリラがやってきて、男の子の問いに、ひとつひとつ答えていきます。

 「しんだって、どうやってわかるの?」

 「みんな しぬの?」

 「ママは、どこにいったの?」

 「ママがいて、ほんをよんでくれたらなあ?」

 「ママのパンケーキは、さいこうだったんだ」

 「いつになったら、かなしくなくなるの?」

 身近な人がなくなったとき、どんな語りかけができるのでしょうか。

 この瞬間もどこかで大切な人を亡くした人がいます。「いつになったら、かなしくなくなるの?」という問いに、どうこたえられるでしょうか。

 木の枝のうえで、遠くを見つめるゴリラと子、父親と手をつなぐ子どもの遠くに、ゴリラが小さく描かれているのが印象的でした。


いえでをした てるてるぼうず

2021年01月07日 | 絵本(日本)

    いえでをした てるてるぼうず/にしまき かやこ/こぐま社/2019年

 

 いいお天気になって、わすれられたてるてるぼうず。

 プンプン怒って、家出をしてしまいました。

 道が二つにわかれていて、どっちにいこうかとおもっていると、「小さい道がいいよ」と、ちょうちょがおしえてくれました。

 ちょうちょは、お花畑に いきましたが、てるてるぼうずは、道のないところは歩けないと、坂道をのぼっていきました。

 おひるごはんを探していたトンビにねらわれましたが、もうじきたまごから あかちゃんが うまれるのをきいて、てるてるぼうずはトンビの巣に。

 「うるさい あかちゃんだねえ。それに ちっとも かわいくない」と、てるてるぼうずが失言してしまい、てるてるぼうずは、巣から突き落とされて、まっさかまに おちていきました。

 うんよく きのえだでぶらさがっていると、森の奥で ガサゴソ おとがして、くまのこどもが やってきました。

 てるてるぼうずは、くまのいえで、きれいにあらってもらい、おまけに赤いリボンまでむすんでもらいました。

 夜、くまのこと なかよくあそんだ てるてうぼうずは、次の日、くまのかぞくと ピクニックにいきました。

 それからてるてるぼうずは、くまのところで たのしく 暮らしています。

 

 絵は、クレヨンなんですね。とってもあたたかい感じがします。

 ちょっと季節外れですが、このところ関東地方はカラカラ続き。一方で日本海側は大雪。自然はコントロールできません。


おばあちゃん

2021年01月06日 | 絵本(日本)

      おばあちゃん/谷川俊太郎・文 三輪滋・絵/いそっぷ社/2016年

 

 生きるっていう意味をあらためて突きつけているようです。

 一ページ目は、いつもねているおばあちゃん。

 二ページ目は、おむつをしています。

 そのあと、おばあちゃんが認知症だというのがわかります。(ということは、一言もでてきませんが)

 <おばあちゃんなんか しんじゃえばいい>

 おばあちゃんが、うちゅうじんになったと思う”ぼく”

 うちゅうじんといっしょに くらすのは むずかしい。うちゅうじんは にんげんそっくりでも にんげんとは どこかちがうから。

 おとうさんや おかあさんも としをとると うちゅうじんに なります。ぼくも いまにうちゅうじんになります。

 

 絵本のほとんどは、あまり内容を確認せずに図書館からかりているので、内容がわかるのはページをひろげてから。衝撃でした。

 認知症は高齢者だけでなく、若くてもなり得る病気。”ぼく”の気持ちだけでなく、介護するおかあさん、”あなたはどなたでしたっけ?”ときかれるおとうさん 簡潔な表現から家族の微妙な気持ちが、じわじわ伝わってきました。


むしばあちゃん

2021年01月05日 | 絵本(日本)

    むしばあちゃん/苅田澄子・作 おかべ りか・絵/佼成出版社/2014年

 

 まあちゃんはお菓子が大好き。チョコレート、ケーキ、キャラメル ドーナッツ、ビスケット、ゆめのなかでも お菓子をたべてる。

 あーあ 歯には食べかすがいっぱい。それでも虫歯にならないのは、口の中にいる むしばあちゃんのおかげ。昼間は耳の中。まあちゃんが 眠ると、真っ白な割烹着を着て、真っ白なふきんをもって せっせ せっせ きゅっきゅ きゅっきゅ。

 ところが むしばあちゃんが 毎晩掃除しても よごれは どんどん ひろがるばかり。

 「えーい、もう やめじゃ やめじゃあ」

 おとなしい むしばあちゃんが、あばれ むしばあちゃんに 変身。ぐるぐる ガンガン、歌って踊る。「うりゃあー!!」どどーん どんどん、うちならす。こうなったら おしまい。お医者さんにいくとガーガーガー チュリーン チュリーン。

 むしばあちゃん、「まあちゃんのめんどうは しぬまで あたしが みなくちゃね」と、ちんまり すわって おちゃを ずずーっ。

 でも、まあちゃんが ずーっと ずーっと 歯磨きしなかったら?。

 やさしそうなおばあちゃんが 歯を掃除してくれると、安心していると、「イッヒッヒー」と、こわーい いればあちゃんが やってきて、やっぱり 歯磨きの大事さでしめています。

 暴れおばあちゃんは 迫力満点。虫歯で痛がる まあちゃんの顔にも同情です。

 歯を大事にするのは、子どものものだけではありません。

 表紙と裏表紙の見返しに、むしばあちゃんの人情味あふれた四コマ漫画の大サービスがあります。


巨頭

2021年01月04日 | 昔話(北アメリカ)

   アメリカ・インディアンの民話/精霊と魔法使い/マーガレット・コンプトン・再話 ローレンス・ビヨルクンド・絵 渡辺茂男・訳/国土社/1986年

 

 人の名前やでてくるキャラクターが、これまでの昔話とはだいぶ違います。

 「はぐれおおかみ」というのは、十人の息子の父親。両親が死んでしまった息子たちは、母親の兄弟だった「ふかい湖」というおじさんのところで暮らすことになりました。「ふかい湖」は兄たちが狩りをして弟をやしなうことができるようになるまで、子どもたちに食べ物と住む場所を与えました。

 兄たちは狩りにでかけますが、そのまま行方不明になり、一番末の「小さいしか」だけが「ふかい湖」のもとに、取り残されてしまいました。

 ある日、「ふかい湖」と「小さいしか」が、森に行くと、ひくいうめき声がきこえました。

 大きな朽ち木のしたになり、土におおわれている男の体を、くまの油で、けんめいにこすると、やがて男は意識を取りもどしました。

 この男は「おれは、腐れ片足といって、巨頭のただ一人の弟だ」と、いいました。

 「巨頭」は巨大な頭だけの怪物で、大きな目玉、かたい髪の毛。どんな生き物でも、その姿を見つけると、空を切るような鋭い声で「みたぞ、みたぞ! そなたのいのちは、もらったぞ!」と、叫ぶのでした。

 おいたちが、巨頭に殺されたことはほぼまちがいないと考えた「ふかい湖」は、まだ十分に回復していない「腐れ片足」を看病し、巨頭を探すようにいいます。

 「腐れ片足」は、魔法の力で、もぐらのからだの中にもぐりこみ、見つからないように、地中の穴をほってすすみます。しかしいくらもすすまないうちに、「みたぞ、みたぞ! そなたのいのちは、もらったぞ!」という巨頭の叫び声がきこえました。しかしその叫び声はふくろうにむけられたものでした。

 「腐れ片足」は、矢で巨頭を誘い出し、近づいてくる音を聞いた「ふかい湖」は、「小さいしか」と、斧で待ち構えました。

 巨頭と腐れ片足は、もともと兄弟で、弟がとうのむかしに死んでしまったものだと思っていた巨頭は、北の国にすむ魔女をころしてやるといいました。

 「わしは、勇ましい戦士や罪のない子どもは、けっしてころしはせぬ」「魔女のやつは、あまい歌声で人間をおびき寄せ、情け容赦なくころしてしまうのだ。」

 魔女が、「小さいしか」の九人の兄弟をころしたことがわかり、「巨頭」「小さいしか」のふたりは、魔女のところにむかいます。魔女のすみかは、死人の骨でみたされたほら穴。指の骨が天井からぶら下がり、頭の皮が山と積まれて寝床になり、しゃれこうべが、なべややかんの代わりとなっていました。魔女の歌声を聞いたものは誰でも、体が氷のように冷たくなってふるえだし、ついには、体から皮や肉が、ぼろぼろになってくずれおち、かわいた骨だけになってしまうのです。

 「巨頭」「小さいしか」は、両耳にクローバーのつぼみをつめ魔女のほら穴に近づきます。

 「巨頭」の「おまえは、いつから、ここにすんでいる?」という問いは、魔女の魔法の力をさまたげますが、頭からも毛が抜けます。巨頭は「小さいわし」に、抜けた毛をすぐに、頭にもどすようにいいます。

 巨頭に魔女にとびかかり、許しをこうた魔女にかみつき、ころしました。魔女の体の肉片がとんで、平原は動物であふれ、川は魚でみたされました。

 それから一年だけしかたっていない骨をほら穴に集め、つむじ風をおくりこんで「みんな、おきろ!」と叫ぶと、骨は、いっせいに立ちあがり、たちまち人間の体にもどりました。兄弟たちはよろこびあい、「小さいしか」の勇気と忍耐心をほめそやし、森の中へ消えていきました。

 

 魔女や巨頭がどんなものかイメージしやしくなっていますが、巨頭というのはお化けにちかい存在でしょうか。楓のぶつ切りをむさぼり食います。巨頭には”おおあたま”というフリガナがついています。


ももんが もんじろう

2021年01月03日 | 絵本(日本)

      ももんが もんじろう/村上康成/講談社/2015年

 

 おにいちゃんも、おかあさんも どこかへとんでいって ひとりぼっちのモモンガもんじろう。

 とびたいけれど、ブルブル ブルブル。よるのやみに、ブルブル ブルブル。

 とつぜん、杉の木が ブワンと ゆれて、風が もんじろうを押したもんだから、
もんじろうは飛んでしまった。ヒュルー!

 バンッ!! よるって かたいとおもったら くまのせなか。

 くまが ポーイと ふりはらうと もんじろうは飛んでしまった。ヒュルー!

 木の枝に つかまったと おもったら 鹿。 鹿と 鳥と、まごいの じさまに おされて バシッ、ストライク!!

 ぶつかったのは とびたった杉の木

 もういちど 杉から言われ ヒョコ ヒョコ、よいしょ、よいしょ

 てっぺんまで のぼって

 もういちど どお~っ!

 もんじろう 二度目は 自分の意志で うまくとべました。背中をおしてくれる存在も見逃せません。

 

 ちいさな可愛いもんじろうと、”世間”の広さが対照的。

 ダジャレもあって 笑えます。


おしゃべりなおかみさん

2021年01月02日 | 昔話(ヨーロッパ)

      大人とこどものための世界のむかし話19 ソビエトのむかし話/田中泰子:編訳/偕成社/1991年初版

 

 何かを耳にしたら最後、もう次の瞬間には、村じゅうがそのことを知っているという どうしようもないおしゃべりなおかみさん。

 この、おかみさんのだんながオオカミの穴でたくさんの金貨が入った釜を見つけましたが、心配なのはおかみさんのおしゃべり。ご亭主の心配どおり、金貨を手に入れたことは、すぐに地主の耳にはりました。

 地主から金貨のことを聞かれたおかみさんの答えは、つぎのようなものでした。

 「森の木の枝には、どれもクレープがくっついて、ウサギのわなを見たらカマスがかかっていて、川にしかけた網にはウサギがかかって、さいごに川の近くで、うちの亭主が金貨を掘り出して、袋につめて、もどってきたんですわ。・・・そんで・・」

 地主はさいごまできかず、「うそつき女!」と、おいだしたので、お百姓夫婦は、なに不自由なく暮らしました。

 おかみさんが地主にいったことは、すべてご亭主が仕組んだものでした。

 おしゃべりを逆手にとったご亭主、おかみさんをよく理解しています。事前周到のご亭主がとった方法が楽しめます。


ハブラシのサミー

2021年01月01日 | 絵本(外国)

   ハブラシのサミー/M・G・レナード・文 ダニエル・リエリー・絵 青山南・訳/化学同人/2020年

 

 パンデミックの影響でやや影が薄くなりましたが、地球温暖化とならんで問題となっている海洋プラスチックゴミ。ストローがプラスチック製から紙製にかわり、レジ袋が有料になりましたが、まだまだ先の見通しはたちません。

 この絵本ではハブラシをとおして、海洋プラスチックを考えていて、親子で環境問題を話し合うきっかけになりそうです。

 

 サミーというのは、6歳のソフィアが、お気に入りの黄色いハブラシにつけた名前。
ハブラシはつかっていると毛先がグシャグシャになり、一定期間つかっていると、捨てられる運命。ここからゴミとなったサミーの冒険?です。

 ゴミ収取車で運ばれ、船に乗り、海を渡って、どこかの遠くあついところについたサミー。
 ソフィアのことが忘れられないサミーは、ネズミの力を借りて川に飛び込み、何日も何週間も海のなかでとばされたり、のみこまれたりします。

 そして、サミーを食べようとしたアホウドリが、海や高い山を、いくつもとびこえて、ソフィアのうちに つれていってくれました。

 ソフィアは、もどってきたハブラシで、お人形の髪をとかしたり、サッカー・シューズもきれいにできるし、絵具もぬれると思い、サミーを ジャムの空き瓶のなかにいれておきました。

 サミーがいくさきざきでであうプラスチック製品が出てきますが、欲を言えばマイクロプラスチック化についてもふれてほしかった。