強姦「強制性交等罪」に 法定刑引き上げ・被害者の性別問わず 刑法改正案、閣議決定へ
2017年2月21日 (火)配信朝日新聞
政府は、性犯罪を厳罰化する刑法の改正法案を3月上旬にも閣議決定する方針だ。強姦(ごうかん)罪の名称を「強制性交等罪」に変更。法定刑を引き上げるほか、男性が被害者の場合や、告訴がないケースでも罪に問えるようにする。開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。成立すれば、性犯罪については明治時代の刑法制定以来の大改正となる。
性犯罪の厳罰化をめぐっては、被害者やその支援者などの声を受け、法務省で検討を進めてきた。昨年9月には、法相の諮問機関「法制審議会」が、刑法の見直しを答申していた。
現在の強姦罪の法定刑は「懲役3年以上」だが、見直しにより、殺人罪の下限と同じ「懲役5年以上」に引き上げられる。強制わいせつ罪とともに、被害者からの告訴がなくても立件できるようになる。
「男性が加害者、女性が被害者」を前提としてきた「強姦」の考え方も変える。「性交に類似する行為」も対象に含め、性別を問わない「強制性交等罪」に名称を改めるという。これらの改正に合わせ、「集団強姦罪」は廃止される。
また、家庭内での性的虐待などを処罰できるよう、親など生活を支える「監護者」が18歳未満に対し、「影響力に乗じて」わいせつ行為や性交をしたことを罰する「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新設。加害者による「暴行や脅迫」が成立の条件となるために被害者が「抵抗しなかった」と泣き寝入りしてきたケースが、処罰できるようになる見通しだ。
(金子元希)
■性暴力、声上げやすい社会に 支援4団体が訴え
国会で議論されるのを前に、被害者の思いがより盛り込まれるよう、被害者や関心を持つ人たちが連携して活動を進めている。
1月下旬、翼の形をしたマスクを目につけた集団が国会周辺に現れた。ジェンダー問題などを扱う社会派アートグループ「明日少女隊」と、女性の生きづらさの解消をテーマに活動する「ちゃぶ台返し女子アクション」のメンバーたち。パフォーマンスで性暴力に反対し、刑法改正を後押しする「ビリーブ・キャンペーン」の一環だ。マスクには「被害者を支える翼になり、共に進む」というメッセージを込め、被害者が匿名でも声を上げやすいようにした。
「性暴力に対する日本の現状を変えたい」との問題意識を持つ4団体が昨秋から始めた。ほかに参加するのは、被害者らでつくる「性暴力と刑法を考える当事者の会」と、性暴力撲滅に向けた啓発に取り組む「しあわせなみだ」。
現行法で特に問題視するのは、暴行や脅迫が強姦(ごうかん)罪の成立の条件になっていることだ。「当事者の会」代表の山本潤さん(42)は「この条件があることで、被害者が声を上げにくくなっている」。改正案でも、家庭内の性的虐待に対応した新設罪を除き、暴行や脅迫の要件は変わらない。
山本さんたちは昨秋、課題をまとめたブックレットを作成した。女子中学生への強姦罪に問われた被告が「被害者の反抗を困難にするほどの暴行は認められない」などと無罪になった例などを紹介。「力関係がもとで起きているのに、実態を踏まえないことが加害者を守ることにつながっている」などと問題提起する。ほかに、サイト「Change.org」で刑法改正に向けた署名を集める。
「ちゃぶ台返し」共同発起人の鎌田華乃子さん(39)は「罪となるハードルが高いために、『自分が悪かったんだ』と責めてしまう被害者は多い。まだ課題は多いが、法律が変わることで、社会や女性自身の意識が変わってほしい」と期待する。
(塩入彩)
■改正法案の主なポイント
・被害者の告訴がなくても罪に問う
・強姦罪の法定刑を「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に、強姦致死傷罪は「無期または懲役5年以上」から「無期または懲役6年以上」にする
・強姦罪を「強制性交等罪」に改め、被害者・加害者ともに性別を問わない
・「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新たに設け、生活を支える親などによる影響力に乗じた18歳未満への行為を処罰する
2017年2月21日 (火)配信朝日新聞
政府は、性犯罪を厳罰化する刑法の改正法案を3月上旬にも閣議決定する方針だ。強姦(ごうかん)罪の名称を「強制性交等罪」に変更。法定刑を引き上げるほか、男性が被害者の場合や、告訴がないケースでも罪に問えるようにする。開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。成立すれば、性犯罪については明治時代の刑法制定以来の大改正となる。
性犯罪の厳罰化をめぐっては、被害者やその支援者などの声を受け、法務省で検討を進めてきた。昨年9月には、法相の諮問機関「法制審議会」が、刑法の見直しを答申していた。
現在の強姦罪の法定刑は「懲役3年以上」だが、見直しにより、殺人罪の下限と同じ「懲役5年以上」に引き上げられる。強制わいせつ罪とともに、被害者からの告訴がなくても立件できるようになる。
「男性が加害者、女性が被害者」を前提としてきた「強姦」の考え方も変える。「性交に類似する行為」も対象に含め、性別を問わない「強制性交等罪」に名称を改めるという。これらの改正に合わせ、「集団強姦罪」は廃止される。
また、家庭内での性的虐待などを処罰できるよう、親など生活を支える「監護者」が18歳未満に対し、「影響力に乗じて」わいせつ行為や性交をしたことを罰する「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新設。加害者による「暴行や脅迫」が成立の条件となるために被害者が「抵抗しなかった」と泣き寝入りしてきたケースが、処罰できるようになる見通しだ。
(金子元希)
■性暴力、声上げやすい社会に 支援4団体が訴え
国会で議論されるのを前に、被害者の思いがより盛り込まれるよう、被害者や関心を持つ人たちが連携して活動を進めている。
1月下旬、翼の形をしたマスクを目につけた集団が国会周辺に現れた。ジェンダー問題などを扱う社会派アートグループ「明日少女隊」と、女性の生きづらさの解消をテーマに活動する「ちゃぶ台返し女子アクション」のメンバーたち。パフォーマンスで性暴力に反対し、刑法改正を後押しする「ビリーブ・キャンペーン」の一環だ。マスクには「被害者を支える翼になり、共に進む」というメッセージを込め、被害者が匿名でも声を上げやすいようにした。
「性暴力に対する日本の現状を変えたい」との問題意識を持つ4団体が昨秋から始めた。ほかに参加するのは、被害者らでつくる「性暴力と刑法を考える当事者の会」と、性暴力撲滅に向けた啓発に取り組む「しあわせなみだ」。
現行法で特に問題視するのは、暴行や脅迫が強姦(ごうかん)罪の成立の条件になっていることだ。「当事者の会」代表の山本潤さん(42)は「この条件があることで、被害者が声を上げにくくなっている」。改正案でも、家庭内の性的虐待に対応した新設罪を除き、暴行や脅迫の要件は変わらない。
山本さんたちは昨秋、課題をまとめたブックレットを作成した。女子中学生への強姦罪に問われた被告が「被害者の反抗を困難にするほどの暴行は認められない」などと無罪になった例などを紹介。「力関係がもとで起きているのに、実態を踏まえないことが加害者を守ることにつながっている」などと問題提起する。ほかに、サイト「Change.org」で刑法改正に向けた署名を集める。
「ちゃぶ台返し」共同発起人の鎌田華乃子さん(39)は「罪となるハードルが高いために、『自分が悪かったんだ』と責めてしまう被害者は多い。まだ課題は多いが、法律が変わることで、社会や女性自身の意識が変わってほしい」と期待する。
(塩入彩)
■改正法案の主なポイント
・被害者の告訴がなくても罪に問う
・強姦罪の法定刑を「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に、強姦致死傷罪は「無期または懲役5年以上」から「無期または懲役6年以上」にする
・強姦罪を「強制性交等罪」に改め、被害者・加害者ともに性別を問わない
・「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新たに設け、生活を支える親などによる影響力に乗じた18歳未満への行為を処罰する