保険料増、住民の反発必至 頭抱える市区町村 「表層深層」国保都道府県移管
行政・政治 2017年8月28日 (月)配信共同通信社
国民健康保険(国保)は来年4月、運営主体を市区町村から都道府県に移すという制度創設以来の大改革を迎える。国は財政支援を拡充して加入者への影響を抑える方針だが、自治体によっては保険料上昇が避けられない見通しで、住民の反発も予想される。半数近い都道府県は負担の公平化に向け、それぞれ将来の保険料一本化を検討しているが、市区町村間の利害調整など課題は山積みだ。
▽ため息
小麦などの畑作が盛んな北海道更別村。来年度からは都道府県が市区町村ごとの医療費や所得の水準をもとに、目安となる「標準保険料率」を示す仕組みに変わるため、所得の高い大規模農家が多い更別村の保険料は現在よりも上がる見込みだ。村の担当者は「医療環境が改善されるわけでもないのに、突然保険料が上がったら住民の理解は得られない。村だけでも運営できるのに」とため息をつく。
兵庫県朝来市も来年度から保険料が上がる見通しだ。国保の赤字を穴埋めし、保険料を低く抑えてきた市の財政調整基金は残り約100万円となり、底を突きかけている。「国の財政支援にどこまで期待していいものか...」と市の担当者。今後、医療費削減の取り組みに力を入れるが、「職員が限られている中で努力には限界もある」と頭を抱える。
▽考慮
瀬戸内海に浮かぶ人口約1万7千人の島・山口県周防大島町。高齢化率が高く、所得水準が低いことが考慮され、来年度に県が国保の運営を始めると、保険料は今よりも少し下がると予想する。
現在は一般会計から繰り入れをしながらなんとか国保を運営している。町の担当者は「国保財政がうまくいっていない市町村は、都道府県への移管によって助かるかもしれない」と話す。
厚生労働省は「同じ都道府県内で引っ越したら、保険料が上がった」ということが起きないよう将来的には、都道府県単位での保険料水準一本化を目指している。
▽不公平
ただ、例えば住民の健康づくりに熱心で医療費を低く抑えていた市区町村が、医療費の高い他の市区町村に引きずられて保険料が上がるといったことが起きる可能性もあり、自治体からは「むしろ不公平だ」との声も。このため、都道府県の対応方針は割れている。
広島県は「市町の垣根を越え、所得に応じた負担にする公平な仕組みを目指す」として、2024年度に保険料を原則、統一する考えだ。同様の方針を掲げる滋賀県は、市町間の医療費の格差が約1・2倍と小さく、管内市町の理解が得やすかったという。
一方、高知県は市町村の医療費水準や受けられる医療サービスに差があることなどを理由に、当面は一本化しない方針を示す。鳥取県も一部の首長から一本化に消極的な声が出て、方針がまとまっていない。同県は「一本化のメリット、デメリットを慎重に考えなければならない」としている。
厚労省が理想とするのは、都道府県が主導して、医療費がかかっている市区町村に削減努力を促し、医療費水準をそろえたうえで保険料も一本化するという流れだ。同省は「市区町村の意向も踏まえながら、医療費の適正化や医療サービスの均等化を進めてほしい」としている。
行政・政治 2017年8月28日 (月)配信共同通信社
国民健康保険(国保)は来年4月、運営主体を市区町村から都道府県に移すという制度創設以来の大改革を迎える。国は財政支援を拡充して加入者への影響を抑える方針だが、自治体によっては保険料上昇が避けられない見通しで、住民の反発も予想される。半数近い都道府県は負担の公平化に向け、それぞれ将来の保険料一本化を検討しているが、市区町村間の利害調整など課題は山積みだ。
▽ため息
小麦などの畑作が盛んな北海道更別村。来年度からは都道府県が市区町村ごとの医療費や所得の水準をもとに、目安となる「標準保険料率」を示す仕組みに変わるため、所得の高い大規模農家が多い更別村の保険料は現在よりも上がる見込みだ。村の担当者は「医療環境が改善されるわけでもないのに、突然保険料が上がったら住民の理解は得られない。村だけでも運営できるのに」とため息をつく。
兵庫県朝来市も来年度から保険料が上がる見通しだ。国保の赤字を穴埋めし、保険料を低く抑えてきた市の財政調整基金は残り約100万円となり、底を突きかけている。「国の財政支援にどこまで期待していいものか...」と市の担当者。今後、医療費削減の取り組みに力を入れるが、「職員が限られている中で努力には限界もある」と頭を抱える。
▽考慮
瀬戸内海に浮かぶ人口約1万7千人の島・山口県周防大島町。高齢化率が高く、所得水準が低いことが考慮され、来年度に県が国保の運営を始めると、保険料は今よりも少し下がると予想する。
現在は一般会計から繰り入れをしながらなんとか国保を運営している。町の担当者は「国保財政がうまくいっていない市町村は、都道府県への移管によって助かるかもしれない」と話す。
厚生労働省は「同じ都道府県内で引っ越したら、保険料が上がった」ということが起きないよう将来的には、都道府県単位での保険料水準一本化を目指している。
▽不公平
ただ、例えば住民の健康づくりに熱心で医療費を低く抑えていた市区町村が、医療費の高い他の市区町村に引きずられて保険料が上がるといったことが起きる可能性もあり、自治体からは「むしろ不公平だ」との声も。このため、都道府県の対応方針は割れている。
広島県は「市町の垣根を越え、所得に応じた負担にする公平な仕組みを目指す」として、2024年度に保険料を原則、統一する考えだ。同様の方針を掲げる滋賀県は、市町間の医療費の格差が約1・2倍と小さく、管内市町の理解が得やすかったという。
一方、高知県は市町村の医療費水準や受けられる医療サービスに差があることなどを理由に、当面は一本化しない方針を示す。鳥取県も一部の首長から一本化に消極的な声が出て、方針がまとまっていない。同県は「一本化のメリット、デメリットを慎重に考えなければならない」としている。
厚労省が理想とするのは、都道府県が主導して、医療費がかかっている市区町村に削減努力を促し、医療費水準をそろえたうえで保険料も一本化するという流れだ。同省は「市区町村の意向も踏まえながら、医療費の適正化や医療サービスの均等化を進めてほしい」としている。