「地元の感染第1号の女性自殺」デマも…自治体、中傷のPC画像を「証拠」に活用
新型コロナウイルス感染者に関するデマや誹謗中傷がインターネット上で横行していることを受け、問題があると判断した書き込みを画像で保存する動きが自治体で広がっている。被害者が名誉毀損きそんで提訴する際に証拠として活用してもらうためだ。政府もネット上の中傷について、対策の検討を始めている。
岩手県は8月から、問題のある書き込みをパソコンのスクリーンショットと呼ばれる機能を使って画像として保存している。県内では7月29日に感染者2人が初めて確認された。うち1人の男性の勤務先企業が同日夜、ホームページ(HP)で社員の感染を公表したところ、2日間で100件を超える電話やメールがあった。「会社の指導が足りない」「感染した社員をクビにしたのか」といった中傷も含まれていたことが、取り組みのきっかけという。
簡易投稿サイト「ツイッター」上では、「地元のコロナ感染第1号の女性が自殺した」などのデマも確認された。県在住の人物の書き込みとみられる。県によると、これまでに県内感染者で自殺者はいない。県がこれまでに保存した書き込みは、少なくとも20件近くあるという。
他の自治体も対策を強化している。
鳥取県はネットパトロールで、これまでに悪質な書き込みを40件見つけ、うち6件について「事実と異なる」などと県HPで注意喚起。8月から問題のある書き込みの画像保存を始めた。広報課は「書き込まれた人が名誉毀損などで提訴する際、画像を提供する用意もある」とする。
長野県も先月、新型コロナ関連人権対策チームを設置し、専用の電話相談窓口も開設した。悪質な書き込みは画像で保存し被害者に提供する考えだ。
徳島県は5月から県内の大学と協力し、感染者個人を特定したり攻撃したりする書き込みを監視。悪質な書き込みがあればサイト運営者らに依頼し、14件の削除につなげた。
政府は、有識者らがメンバーの新型コロナ対策分科会に偏見・差別とプライバシーに関する作業グループを設置し、1日に初会合を開いた。今後、感染者に対する偏見や差別の実態を把握するため、医療機関や介護事業者、報道機関にヒアリングを行い、11月に中間報告を取りまとめる。