ゼリア新薬工業の伊部充弘社長は2020年4~9月期の決算説明会で、9月に発売した鉄欠乏性貧血治療の新薬「フェインジェクト」について、「発売直後で第2四半期における業績への寄与はわずかなものだが、今後は売り上げに貢献することを期待している」と市場開拓への意欲を述べた。「鉄欠乏性貧血患者が多く受診する婦人科領域をはじめ、潰瘍性大腸炎やクローン病など消化管からの出血が多発する疾患を治療する消化器内科を中心に新たな治療選択肢を提供する」考えだ。
フェインジェクトはスイスのビフォーファーマが開発したデキストラン非含有静注鉄剤で、世界83カ国で承認されている。日本では18年4月から1年間で鉄欠乏性貧血と診断された患者数は約490万人と推計され、約220万人が鉄製剤の処方・治療を受けている。ただ、国内の鉄製剤市場で販売されている注射剤は1剤のみで、治療の選択肢が限られていた。
貧血治療を巡っては、内服剤を受け付けない患者が少なくない。既存の注射剤は頻回に医療機関を訪れないと治療効果が現れない難点もあるという。これに対しフェインジェクトは「主成分の特徴的な体内動態により、1回で500ミリグラムと大量の鉄を投与することが可能」(伊部社長)だ。
遠藤広和副社長は「1週間に1回、医療機関に通い治療を受けてもらえれば、人によって違うが(少ない通院回数で)効果が現れる特徴がある」と強調。発売2カ月半で「先生方から相応の評価を現実にいただいている」と手応えを示した。「こうした製品特徴を生かしながら営業活動を行っていきたい」と話し、「注射剤の分野で相応のシェアを取っていけるだろう」と期待を寄せた。