夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

黒髪の婦人(仮題) 木下孝則画 その4

2022-06-22 00:01:00 | 洋画
古くから当方の家にあった木下孝則の作品であり、小生にとっては親しみのある画家ですがこのたび新たな作品(その4)を入手しましたので紹介いたします。


黒髪の婦人(仮題)木下孝則画 その4
油彩額装 左下サイン 誂:黄袋+タトウ
額サイズ:縦820*横715 画サイズ:横595*縦490 F12号


絵の剥落や額の傷みなどがあり、保存状態は良好とはいえないようです。

あらためて木下孝則の画歴は下記のとおりです。かなりの高学歴の持ち主のようです。

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木下孝則:1894年2月24日~1973年3月29日。日本の洋画家。東京市四谷区生まれ。

同じく画家の木下義謙は実弟。父の友三郎は明治大学総長。母方の叔父の児島善久雄は西洋美術史家。

学習院中等科を経て学習院高等科を卒業する。 京都帝国大学法科大学政治経済学科および東京帝国大学文科大学哲学科をいずれも中退。

このころに小島善太郎など複数の画家と知り合い、油絵を開始。1921年、二科展に入選。その後フランスに留学。帰国後に二科会展で樗牛賞および二科賞受賞。1936年に二科会と一水会創立会員になった。

1920年代エコール・ド・パリの雰囲気を吸収し日本に紹介した「1930年協会」の主要メンバーのひとり。

明快な色調と優れた描写力で、踊り子を含む洗練された女性像を数多く描いたことで知られる。


1958年には日本芸術院賞受賞。1973年に没し、勲四等旭日小綬章受章。木下の作品には、女性をモチーフとしたものが多い。

*最近では美輪明宏さんがなんでも鑑定団に出品した作品がありますね。

参考作品 出品者:美輪明宏 なんでも鑑定団出品作
木下孝則の肖像画 3点
2018年9月25日放送 評価金額:350万円


鑑定団の鑑定士の評:木下孝則は女性を描き続けた、それも自分が見初めた、美しいと思ったものを描く意欲がたいへん深い。良い意味で筆の止めどころを知っているセンスを持った作家。例えば腰掛けている作品の背景は明るめのグレーや白というトーンですーっとなんのためらいもなく描いている。リズミカルで軽快な筆遣い。良く特徴が出ている。また、対象の中で気に入った細部を見出す。目が行ったのは手の綺麗さ、動き。

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木下孝則はバレエの踊り子を描いた作品が多いですが、女性を品良く描いた作風が真骨頂のようです。


本作品はいつ頃描いたのでしょう・・、初期の頃の作品のようですがよく分かりません。


前述のように絵の具の剥落など痛みのあるようです。


左下にサインが著されています。


額も手入れが必要なようです。こうなると小生はどうしても修復したくなるという一種の病気・・。


ガラスにカビが付いていたり、剥落した画材が額内にこぼれていたり、長らく飾っていたようですが、手入れがおろそかになっていたようです。湿気の高いところで保管されていたのかもしれませんね。


額を分解して中を掃除しておきましたが、絵の具の剥落まで補修すると10万円以上は費やすことになりそうですので、これはちょっと思案中です。


「黒髪の婦人・・ いつ頃描いたのでしょう・・」と考えると思い出すのが下記の「週刊朝日 昭和31年4月15日号」の表紙の絵です。

表紙画・木下孝則「岸恵子」


この作品は昭和31年(1956年)に木下孝則62歳、岸恵子24歳の時に描いたものです。本作品のモデルが女優の岸恵子さんならと思いを馳せるのですが・・・。

さてこの画家は前述のように小さな頃から親しんできた画家のひとりであり、下記の作品は郷里の男の隠れ家の母の寝室であった壁に飾られている作品です。

他の所蔵作品解説                      
裸婦 木下孝則画 その1
油彩額装 左下サイン
画サイズ:横435*縦515 F10号


当方のお気に入りの作品のひとつですが、銀座の日動画廊から父が購入した作品で、品格のある優品だと思います。母の若い頃に似ていたのでしょうか??

サインから1955年に描いた作品であり、その年には銀座の日動画廊で「木下孝則油絵展」が開催されていました。前述の表紙画・木下孝則「岸恵子」とほぼ同時期の作品です。


大人の女性の品の良い色香が漂う作品ですが、木下孝則の作品では脚のうつくしさが注目とされます。その点からもこの作品は木下孝則の作品中でもおそらく逸品のひとつと思われます。


下記の作品は小作品ですが、凛とした女性の強さが伝わってきます。裏のシールに(日展)参事とあることから1952年以降の作と推察されます。

ピンクのドレス 木下孝則画 その2
油彩額装 右上サイン 誂:黄袋+タトウ
額サイズ:縦415*横365 画サイズ:横273*縦220 F3号


*左は室町期の古信楽の壺。

小作品ながらやはり脚に注目が向きますね。


全体の構図に動きをもたらします。


木下孝則の作品では当方にはもう1点、薔薇を描いた作品がありますが、やはりここに紹介した3点のように女性を描いた作品がいいですね。


この度の展示室には古九谷と源内焼の大盤、藤田嗣治、そして木下孝則・・。お気に入りの作品を揃えてみました。


本日の作品は周囲の絵の具の剥落だけでも見切縁で隠そうかと思っています。

はてさてひとりの画家でさえもいろいろと調べると無尽蔵にいろんなことが解ってきます。骨董蒐集の三原則に「自分の金で作品を買うこと、蒐集を休んで勉強すること、自分の作品を売ってみること」というのがありますが、「蒐集を休んで勉強すること」の面白さを味わっています。



追記:神田の額装店にて後日痛んでいた額装が修正されてきました。良い絵なので絵の具の剥落の修復も勧められましたが、さすがにかなり高額なようで今回は本体の修復には手をかけないことにしました。



絵の本体の周囲の傷を見切縁で隠すだけでだいぶ見栄えがよくなりました。

本ブログに書きこんだことなどを含めて調査で判明したことを記録にして同封しておきます。



週刊朝日の表紙には木下孝則の作品が数多く採用されています。このような資料は現代ではインターネットにてすぐに入手できるのはありがたいですね。



額の裏面の修復、金具や紐の交換もしております。



前述のように絵の周囲にはもう一段の見切り縁を回しております。これによって絵の具の剥落の多い部分がかなり気にならなくなりました。



絵をゆっくりたのしく楽しむにはそれなりのメンテは不可欠のようです。入手したら飾りぱなっしや仕舞いこんだまま、所狭しと部屋に放置したままというのはいけませんね。さらに人によっては入手したまま梱包も開けないという御仁もおられるようです😖 


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