(上)西光寺・達谷窟磨崖仏
2022年12月17日(土)、岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンター(岩手県西磐井郡平泉町字伽羅楽108-1)が現在開催中の”開館一周年記念企画展・石のほとけ”関連行事として開催された第6回平泉学講座「達谷窟の摩崖仏ー阿弥陀如来か大日如来か」を聞きに行ってきました。
講師は羽柴直人(平泉世界遺産ガイダンスセンター学芸員)氏。13:30~15:00時。
謎に満ちた達谷窟(たっこくのいわや)の磨崖仏。何時、誰が作ったものか?そもそも、磨崖仏は阿弥陀如来なのか大日如来なのか。企画展担当者が考古学的視点からお話されました。
講師の羽柴氏はスライドを多用した説明で、わかりやすく解説してくれました。
1・達谷窟の摩崖仏「岩面大仏」:達谷西光寺(平泉町字北澤)境内の岩壁に掘り込まれた磨崖仏。地表から額部までの高さ15.945m。胸から下は欠損。頭部も欠損していると看取される。
向かって右には達谷窟毘沙門堂が所在。制作年代は確定されていないが、前庭部の発掘調査と奥州藤原氏の事績から12世紀の可能性が高いと考える。
尊名について:近世の記述では大日如来が主流。絵図では阿弥陀如来と見て取れる事例もある。近代以降も大日如来とする文献がほとんど。
大日如来への疑問:司東真雄1980『東北の古代史探訪』八重岳書房 阿弥陀如来と解釈。主たる根拠 安永九年(1780)の『奥州磐井郡達谷窟之図』の岩面大仏の姿が阿弥陀如来であること。…最古の史資料『平泉諸寺参詣曼荼羅』の岩面大仏画像も阿弥陀如来と看取できる姿。
中世以前の磨崖仏の分布:平泉以北には明確な中世以前の巨大磨崖仏は存在しない。(小型のもの、磨崖碑を除く)。達谷岩面大仏が最北の大磨崖仏といえる。直接比較し得る磨崖仏は東北地方には見当たらない。関東以北では、栃木県塩谷町所在の「佐貫石仏」との関連があると考える。