音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆2月23日 ピアノ・リサイタル in 東京文化会館

2009年01月24日 | 音楽(一般)
この度、昨年5月に行いましたピアノ・ソロ・リサイタルに続き、
「瀬川玄 始動」と題しましたリサイタル・シリーズの最終回を、
2009年2月23日(月曜日)東京文化会館小ホールにて行います。
http://www.t-bunka.jp/calendar/calview.html?ym=20092&d=24&m=small

今までの二回のリサイタルと今回のプログラムは、
ドイツでの留学生活中に、日本帰国後にはこの演目で演奏会をと決めて
いたものでした。そして「始動」をいつまでも続けるわけにもゆかず、
今回をもって日本帰国を念頭に置いたこのシリーズは完結としたいと思っております。



プログラムの前半はショパンで《ノクターン作品27》の二曲。
始まりは静かな夜の波打ち際が思い起こされ、中間部における
ショパンには珍しい【fff(フォルティシシモ)】という音量などからは、
私には海王ポセイドンの出現が想像されます。
続く二曲目は、ショパンの最も好きだったと言われる調性
「変ニ長調」による、彼の《ノクターン》の中でも最も美しいひとつ
と言って過言ではない至極の名作です。 

次の《ピアノソナタ作品35》は、第3楽章の
《葬送行進曲》がソナタとしての曲の成立の発端となり、
数年後にその他の楽章が書き上げられたと伝わる
「死」と「生」を主題とした音楽です。そして
その《葬送行進曲》と同時期に書かれていたのが、
名作《スケルツォ第2番 作品31》であり、両作品とも
同じ「変ロ短調」で書かれていることなどからも、
この二作品の少なからぬ関連性が推察され、
今回はこの二つを並べてみたいと思いました。


後半に演奏いたしますのはベートーヴェン
《ピアノソナタ作品106》別名“ハンマークラヴィア・ソナタ”。

この作品は全32曲あるベートーヴェンのピアノソナタの内、
最も長大かつ難しいと言われる作品で、これを演奏会のプログラムに
乗せるということは、古今東西全てのピアニストにとって「一大挑戦」
と言っても過言ではなく、それはまるで世界最高峰の山「チョモランマ」に
登ることと例えてもよいのかもしれません・・・

第1楽章はオーケストラのための音楽のようでもあり、
その当時ベートーヴェンが手に入れた最新鋭の
ブロードウッド製グランドピアノの性能を限界まで
酷使して喜ぶ彼の姿が思い浮かぶようです。

第2楽章は短いスケルツォで、
諧謔的でありながらもどこかしら不穏な空気が流れ、
スヴァトスラフ・リヒテルはこの楽章を「息子イサクを
神の生贄に捧げようとするアブラハム」に例えています。

続く第3楽章は、全体でおよそ20分はかかる長大なコラールと歌による
嘆きの音楽といえましょう。人間としての生きる苦悩の先に、
救済の兆しが見えるのか見えないのか・・・?

そして終楽章は、幻想的に彩られる序奏の先にこの大ソナタの
最後の関門、後期ベートーヴェンの音楽における特徴でもある
「フーガ」がきて、あらゆる対位法の技法が駆使された音の連なりに、
奏者は全力を注ぎ込んでこれに挑まなければなりません。


この曲が書かれた1817年頃のベートーヴェンは、
相変わらず消えることのない聴覚障害の問題に重ねて、
病気等による健康状態の悪化や、ナポレオン戦争による生活の困窮や、
甥カールの親権問題など、あらゆる悩みの種に苛まれて
精神的スランプの時期に陥り、創作意欲は衰退し、
身も心もどん底の状態にあったと言われています・・・

しかしそのような最悪の状態を、ベートーヴェンはやはり
音楽を通して抜け出ることとなり、ロマン・ロランが
「復活の歌」とも命名したこの《ハンマークラヴィア・ソナタ》は
彼自身が取り戻した「生きる力」の象徴でもあり、その後に続く
充実さらなる後期作品群への足取りを踏み出す軌跡とも
捉えることができましょう。その巨大な音楽の力が
今を生きる我々にとっての「生きる力」となりますよう、
全身全霊をかけて演奏したいと思い、
そう何度も演奏できない《ハンマークラヴィア》に挑む一人の人間の姿を、
より多くの皆様に見届けていただけたらと願う次第でございます。


(詳細は↑画像、または↓以下のアドレスをクリックください)
http://www.nipponartists.jp/ticket/td20090223.html


今回の公演は月曜日の夜ということで、日取りとしては
皆様にお集まりいただくのにあまり都合のよくない日と
なってしまいましたが、由緒ある東京文化会館にて
初めて演奏させていただける許可を得ることができ、
これも皆々様の今日までの応援あったればこそと、
この場をお借りして感謝申し上げつつ、
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。


2009年1月吉日 瀬川玄






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