唐突なアクセント。
楽譜とまったく違ったダイナミクス。
普段全く聴いたことのないような旋律。
ソロになったとたんに、完全にテンポ感を失う自由さ。
気違いの沙汰としか考えられない、破滅的な・破壊的な演奏である。
それでいて、時にとてつもなく澄んだ美しい音を奏でる・・・
演奏中、しばらく考えあぐねて、
ようやくポゴレリッチのしている音楽を紐解く
一つのアイディアにたどり着いたとすれば、それは、 . . . 本文を読む
昨晩、あるひとつのコンサートへと出かけ、
それはあまりにショッキングな演奏会でした。
「ショック」とは、単にネガティブな意味での批判ではなく、
演奏について、音楽について、芸術について、
そして人間について、色々と考えさせられたことを意味します。
ここにおいて、批評家を気取るつもりは毛頭無いのですが、
この貴重な体験を、自分のためにも、ひとつ文章にして残してみたい
と思い、試みてみました。
. . . 本文を読む
さらに引き続き、ベートーヴェン《後期ソナタ》の類似性について
書いていきたいと思います。
◇◆◇◆
●ベートーヴェンの音楽において、特徴的とも言える
「長いTriller(トリル)」をいくつもの作品に見ることができましょう。
最後のソナタ《32番op.111》の終楽章、前々回ご紹介しましたよう
自由な変奏へと移り変わるところでは、高音部の長い長い「Tr.」が
非常に印象的に鳴り響き続けま . . . 本文を読む
引き続き《後期ソナタ》の類似性を見ていきたいと思います。
◇◆◇◆
●調性的な類似を観ていきますと、
先日の記事に挙げました引き続き、
《ソナタ31番op.110》の箇所(56小節、再現部)は、
ソナタ形式の基本通り、元調の「As-Dur(変イ長調)」となって
戻ってきますが、しばらくして、特異な転調を経て、
ややこしい言い方をしますと
「短調サブドミナント(下属調の同名調)の平行調」である . . . 本文を読む
ベートーヴェン最後のソナタ《32番op.111》を練習しながら、
その前の二作品《ソナタ30番op.109》と《ソナタ31番op.110》との
類似箇所が多々あることに気付き、これらの三作品の
お互いの密接しあった深い関係を見たような気がするのです。
それは
◆調性的なものであったり、
◆類似の音型であったり、
◆Triller(トリル)の扱い方であったり、
そうした具体的なこれらの音楽作品の . . . 本文を読む
ベートーヴェン《ソナタ8番“悲愴”》III楽章、
今まで無意識に使用していたPedalを意識的に少なくする練習で、
余計な残響とペダルの使用によるメロディーの和音化を阻止した結果
見えてきたのは、明瞭化された「声部達の動く様」でした。
左手の伴奏はうねる波のようでもあり、
右手の単旋律はひとつの「うた」のようです。しかし、
ふと現れる「別の声」(第28小節)が、この音楽に現れる登場人物が
一 . . . 本文を読む
先日の日記でも触れましたが、
ベートーヴェンの音楽におけるペダルの使い方が、
物理的な音響としての効果と、音楽の内的なものの両者に非常に密接して
いると、最近ではさらに一層強く感じるようになっています。
(「ペダルの問題」は、ベートーヴェンのピアノソナタに限らず、
ありとあらゆるピアノ曲に関わる大問題と言えましょうか)
ペダルに関する最近の新たな発見を思い返してみますと、
師匠からのレッスンを思 . . . 本文を読む
困ったことになりました・・・・先日の日記の内容を、
撤回させなければならない事態となってしまうかもしれません・・・。
こちらの画像は、師匠K.Schilde先生の直筆、
日本中のSchilde門下なら(!?)皆心当たりのある
「シルデ・ノート」を写したものです。
(許可無くこんなことをして、許されるのだろうか・・・
まぁしかし、きっと師匠も自分のレッスン内容が、
音楽を愛する多くの方々の目に . . . 本文を読む
「Grave」という重々しいテンポに乗ったこの冒頭の悲劇の始まりを
告げるような和音は、実音符以上に長く伸ばして演奏されるべきもの、
と師匠K.Schilde先生はおっしゃっていました。
印象の深いこの冒頭の和音を効果的に奏でるためには、音量・音質と共に
ある程度の時間を必要とするということなのでしょう。
とはいえ、気をつけなければならないのは、奏者の勝手で
倍も長い時間を取ってしまうと、全く . . . 本文を読む
I楽章のc-moll(ハ短調)の冒頭の和音は、曰く付きといえましょうか。
どんな曰くかというと、
作曲者による冒頭の「fp」の指示が、弾くものをなんとも戸惑わせます。
なぜなら、
ピアノという楽器は構造上、一度音を鳴らしてしまうと
その後の鍵盤上での音量のコントロールは、基本的には不可能となります。
よって、この冒頭の和音を「f」で力強く鳴らした後に
「p」に落とすことは、物理的には基本的に . . . 本文を読む
超有名曲!?ベートーヴェンのピアノソナタの中でも
抜群の人気を誇るらしい
《ピアノソナタ8番op.13 c-moll(ハ短調)“Pathétique(悲愴)”は、
次回のピアノソナタ全曲演奏会(最終回)の冒頭を飾る予定の
曲となっております。
この曲の音楽的内容を、
ベートーヴェンという大作曲家の一連の作品群として見たとき、
この《悲愴ソナタ》はまだ若かりしベートーヴェンにおける、 . . . 本文を読む
一人の作曲家、しかもベートーヴェンという
西洋クラシック音楽のジャンルにおいて大きなキーパーソンとなる
この大作曲家の作品の一群を知り得た事は、この音楽のジャンルで
やっていこうとする人間にとって、何にも変え難い大きな糧と
なるのだと思います。
ベートーヴェンの音楽を知ることは、すなわち彼の後世に続く
シューベルト、シューマン、ブラームス、リストなど
(ここに挙げたロマン派の彼らは皆、ベート . . . 本文を読む
残り一回のコンサートを控えた
ソナタ全曲演奏会のツィクルスを思い返し、
今までの8回という、自分にとって今までにやったことのない
速いペースと膨大な量のコンサートをこなしてみたものの、
時が過ぎ去ってみると、なんとも途方に暮れた奇妙な気分でいました・・・
しかし、これではいかん、
せっかくの努力をもっと有意義なものにせねばと思い立ち、
ひとつまじめに気持ちの整理を心がけてみて、このツィクルスを
振 . . . 本文を読む
(前置き)
もしも、Henle関係者の目に触れたら、
あまり良い印象ではない日記の題名となってしまいましたが、
しかし、
良心と誇りある、世界的クラシック音楽出版社であることを信じ、
使用者の声に真摯に耳を傾け、さらなる努力を払う懐の深さを
持ったHenleであることを信じ、ひとつずけずけと(!?) 書いて
みたいと思います。
(補足)自分の使っているHenle版《Beethov . . . 本文を読む
「指使い」は、
ピアノを弾く者にとって技術的・音楽的の両面において
大きく関わる非常に重要な問題であることに、異論はないと思います。
次回9月のコンサートに向けて、
ベートーヴェン《ピアノソナタ26番op.81a“告別”》の準備に入ったのですが、
この曲は、
以前、現在のドイツ留学の門出となる、数年前の日本での
最後のリサイタルで弾いた曲でもあり、まぁ、
いってみれば自分にとっては「お古」の曲な . . . 本文を読む