音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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■ドビュッシー自身が語る「脱**主義」宣言!?

2012年05月02日 | ドビュッシー Claude Debussy
反好事家八分音符氏(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)著
(ドビュッシーのペンネーム)平島正郎 訳
『ドビュッシー音楽論集』岩波文庫より抜粋


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私は、詩の分野で、あるいは絵画の領域で、
伝統の古い埃をふりはらおうとした人たちがいた(大骨折って私は、
そこに何人かの音楽家をつけくわえた)が、結果は
彼らを象徴主義者あるいは印象主義者という、
そうした仲間を蔑視するのに格好な言葉で
かたづけさせる羽目になったにすぎないことを、
思いきって彼に告げた・・・・・・。

「そんな扱いかたをするのはジャーナリストです。職人です」
とクロッシュ氏は、平然としてつづけた。

「まるでどうでもよいことです。
非常に美しい構想というものは、
かたちづくられつつある過程では、ばかものたちにとって
滑稽に見える部分をふくんでいるのです・・・・・・
嘲笑(わら)いものにされているほうに、
慧眼な運命によって用意された屠場へとおとなしく
消えてゆく一群の羊みたいな連中によりも、
ずっとたしかな美の希望があることを、かたくお信じなさい。

独自(ユニーク)なままでいることです・・・・・・
世間ずれしないでね・・・・・・
――周囲の熱狂は、私に言わせれば芸術家を甘やかすことさ。
彼がやがて周囲の表現でしかなくなるのではないかと、
私はおそれてさえいるくらいです。

弱者にふさわしい老衰した哲学のきまり文句にでなく、
自由のうちに、みずからを律する基準をもとめなければいけない。

誰の忠告もきかぬことです。
吹きぬけざま世界の歴史を私たちにものがたる、
風のそれのほかには」



この瞬間、クロッシュ氏の顔は輝いて見えた。
私は、彼の心のなかをのぞき見、そして彼のことばが
かつて知らない音楽のごとくにきこえたような、気がした。
そのことばから、特別な説得力をもつ文字をそれにふさわしく
書きとることが、私にはできない。しかし、たぶん、こうだ・・・・・・。

「何世紀ものあいだ知られずにいた、
偶然がその秘密をあかすような男への感動以上に、
あなたは、美しい感動を知っておいでか?
――そうした男のひとりであったこと・・・・・・
そこにこそ栄光にあたいする唯一の在りよう(フォルム)がある」


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