吉田秀和著 『現代の演奏』新潮社より抜粋
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爆発的なフォルティッシモの響きもさることながら、
音楽演奏の美しさの急所の最大の一つは、
ピアニッシモの美にある。
そこで、楽器なり声なりの、
音の艶が消えず、表現の充実度が低下しないままに、
ピアニッシモが歌われ、奏されることが肝心なのである。
名人、大家といわれるほどの人々の演奏は、
みんな、そうである。
カルーソーは、ピアニッシモで歌っても、
会場の隅々まで、隈なく声がとどいたという。
それは、
声が届いただけでなくて、
その表現が伝わったからこそ、
素晴らしいのである。
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物理的な音量以上に、
演奏者の音が人々に伝わるための大事なヒントが
示唆されているような、貴重な文章だと思いました。
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