動物園の獣医さん, 川崎泉, 岩波新書 黄版210, 1982年
・まえがきにして、うたれた。その著者の動物にたいする視線の高さが、一般人とは全く違う。
・上野動物園に勤める獣医である著者の日常を綴った書。著者本人にとっては日常でも、その職業の特殊性から、こちらとしてはそれを聞くだけで面白い。読めば読むほど人間の軟弱さを思い知る。 内容とともに平易な文章でもあり万人にオススメできる本です。根元進氏の挿絵も良い。
・あたりまえのことではありますが、人間相手の医者と違って、獣医の場合、哺乳類・鳥類・爬虫類などなどトカゲからゾウまで体の構造が全く違うものを相手にしなければならないとは。大変。
・厳しい自然と闘いながら暮らすか、身の安全を保障され檻の中でヌクヌクと暮らすか、どちらが動物たちにとって幸せなのか。動物園の抱える根本的問題が見え隠れします。
・「(ヤマアラシの針は)これがまた恐ろしくするどい針でして、哺乳類中もっとも弱いと思われるわれわれ人間の柔肌になんなく刺さります。」p.50
・「さらに野生動物はその種類差、個体差こそあれ決して安易に倒れようとはしません。まさに倒れることが死を意味すると本能が叫びつづけているかのように、何とかして立っていようと、あっちへふらふら、こっちへふらふら、そしてついには壁に寄りかかってでも起立を保とうとします。」p.66
・「彼らのけがや病気による「痛み」に対する反応が、私たち人間ほど明確ではない現実があります。言い換えれば、激痛があるだろうと考えられる大けがであっても、全くと言っていいほど痛そうな態度を見せないものがいます。」p.67
・「なんといっても動物の死や死体に慣れてしまうことを獣医師として一番恐れているのですから。」p.135
・「彼らが、自分に生じたこれらの病気を知っていたのかどうか、私たちにはもちろん定かではありません。しかし、それらの現実をみていますと、彼らは、その最期までこのような病気とうまく共存するすべを備えているのではないかという気がしてなりません。」p.140
・「注射や麻酔銃で痛い目にあわせている私どもが、動物に好かれるはずはありません。地球が突如としてサルの惑星にでもなったら、一番先にリンチをうけるのはだれか、そう考えますとつい押さえる力も加減してしまいます。」p.161 www 獣医師はつらいよ。。。
・「歯といえば虫歯とくるのが人間の世界ですが、ここ十数年来哺乳類の飼育頭数四〇〇から五〇〇頭を常時かかえる中で、動物病院がいわゆる虫歯として治療したケースは五指に満たないのです。」p.167
・「飼育技師たちの数多い担当動物の中でゾウの飼育がもっとも危険なものであることは、動物園界では常識です。」p.174
・「獣医師を信用していないというか、自分で治したがるというのか、とにかくそういった患者が多い世界であります。そして、この種の傷は彼らが自分自身で治してしまうのがとてもうまいこともまた事実です。」p.179
・「毎日毎日顔を合わせ、また何回も治療で付き合うような動物たちとは、お互いに相手の心理状態や性格をよみ合っている関係にある。」p.207
・まえがきにして、うたれた。その著者の動物にたいする視線の高さが、一般人とは全く違う。
・上野動物園に勤める獣医である著者の日常を綴った書。著者本人にとっては日常でも、その職業の特殊性から、こちらとしてはそれを聞くだけで面白い。読めば読むほど人間の軟弱さを思い知る。 内容とともに平易な文章でもあり万人にオススメできる本です。根元進氏の挿絵も良い。
・あたりまえのことではありますが、人間相手の医者と違って、獣医の場合、哺乳類・鳥類・爬虫類などなどトカゲからゾウまで体の構造が全く違うものを相手にしなければならないとは。大変。
・厳しい自然と闘いながら暮らすか、身の安全を保障され檻の中でヌクヌクと暮らすか、どちらが動物たちにとって幸せなのか。動物園の抱える根本的問題が見え隠れします。
・「(ヤマアラシの針は)これがまた恐ろしくするどい針でして、哺乳類中もっとも弱いと思われるわれわれ人間の柔肌になんなく刺さります。」p.50
・「さらに野生動物はその種類差、個体差こそあれ決して安易に倒れようとはしません。まさに倒れることが死を意味すると本能が叫びつづけているかのように、何とかして立っていようと、あっちへふらふら、こっちへふらふら、そしてついには壁に寄りかかってでも起立を保とうとします。」p.66
・「彼らのけがや病気による「痛み」に対する反応が、私たち人間ほど明確ではない現実があります。言い換えれば、激痛があるだろうと考えられる大けがであっても、全くと言っていいほど痛そうな態度を見せないものがいます。」p.67
・「なんといっても動物の死や死体に慣れてしまうことを獣医師として一番恐れているのですから。」p.135
・「彼らが、自分に生じたこれらの病気を知っていたのかどうか、私たちにはもちろん定かではありません。しかし、それらの現実をみていますと、彼らは、その最期までこのような病気とうまく共存するすべを備えているのではないかという気がしてなりません。」p.140
・「注射や麻酔銃で痛い目にあわせている私どもが、動物に好かれるはずはありません。地球が突如としてサルの惑星にでもなったら、一番先にリンチをうけるのはだれか、そう考えますとつい押さえる力も加減してしまいます。」p.161 www 獣医師はつらいよ。。。
・「歯といえば虫歯とくるのが人間の世界ですが、ここ十数年来哺乳類の飼育頭数四〇〇から五〇〇頭を常時かかえる中で、動物病院がいわゆる虫歯として治療したケースは五指に満たないのです。」p.167
・「飼育技師たちの数多い担当動物の中でゾウの飼育がもっとも危険なものであることは、動物園界では常識です。」p.174
・「獣医師を信用していないというか、自分で治したがるというのか、とにかくそういった患者が多い世界であります。そして、この種の傷は彼らが自分自身で治してしまうのがとてもうまいこともまた事実です。」p.179
・「毎日毎日顔を合わせ、また何回も治療で付き合うような動物たちとは、お互いに相手の心理状態や性格をよみ合っている関係にある。」p.207