ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】精神鑑定とは何か

2006年01月24日 20時51分30秒 | 読書記録2006
精神鑑定とは何か 何をどう診断するか?, 福島章, 講談社ブルーバックス B-1075, 1995年
・いまや、「精神鑑定といえば福島章」というくらいメディアへの露出が多く、著名な方のようです。
・具体的な精神鑑定の方法についての説明よりも、著者の体験談が主な内容。
・「精神鑑定については次のように定義することが妥当だろう。すなわち、「精神鑑定とは、裁判官や検察官などの司法官が、彼らが取り扱う人々の精神状態について、精神医学者などの判断を求めるときに行わせる専門的な仕事である」と。」p.57 一般人でも病院に行けば精神鑑定を受けられるものかと思ってましたが、裁判所が行う「精神鑑定」と一般の精神的な検査・診断とは全く別物なのか。
・「精神鑑定では、面接の補助としていくつかの心理テストを用いる。」p.152 これも、精神状態の見極めには心理テストが主かと思っていたけど、面接が主なのですね。
・「一九九二(平成四)年中に、精神障害(心神喪失・心神耗弱)のゆえに不起訴処分または起訴猶予処分となった被疑者は七七一人もいる(犯罪白書)。」p.61 軽微な犯罪も含まれ、全体から見るとかなり低い割合なのだろうが、それでも「771」という数字は多く感じる。
・「ある女流推理作家などは、作中の重罪犯人が精神鑑定医をだまして無罪になる小説を書く素材にしたいので、自分に精神鑑定なるものを受けさせてくれと申し込んできたほどである。」p.13
・「精神鑑定の経験を重ねて行くと、重大な犯罪者の脳には、(中略)脳の微細な障害が発見されることが多い。」p.40
・「ハンマーによる検査は、脳や脊髄など中枢神経系の機能を調べているのである。そして、ハンマー一本で、実はかなりのことが分かるものである。」p.73
・「予想される判決が死刑や無期のような重大事件の場合には、できるだけの検査をして被告人に有利な所見を発見したいという気持ちに駆られることが多い。」p.75 こんなこと書いて大丈夫なのだろうか・・・鑑定の公平性は??
・「私のように精神分析を学んだものにとって、人間の心理現象というものはけっして偶然の連鎖ではなく、出来事と出来事の間にはかならず心理的・力動的な因果的関連がはりめぐらされていると考える習慣がついている。」p.95
・「被告人の話ばかりに依存して、記録などに表れている外的な現実を無視している精神鑑定には、裁判所で採用されないものが多い。」p.111
・「精神医学的な問診で得た結論というのは、主観的・経験的・直観的なものが多く、法廷で質問されると論理的に説明できない部分も多い。」p.154
・「物理や化学、あるいはその方法を模した実験心理学などでは、誰が実施しても同じ結果が得られることが期待されている。しかし、だからといって、そうでなければ科学的でないと信じるのは誤りである。そのような再現性(学問的には信頼性という)が保証されているものばかりが科学なのではない。」p.227
・「このように、専門家とか大家といわれる医師たちの診断が食い違うと、人々は「精神鑑定はそれでもか科学なのか」という疑いを持つだろう。(中略)多くの所見を総合して、最終的には鑑定人の学識や直観力にもとづく「判断」を必要とすることがある。そういう「判断」には、法医学的な鑑定でも、結論が人によって違うことがある。(中略)さて、「精神鑑定は科学か」という最初の命題に戻ると、精神鑑定は科学的な基礎の上に立脚した一種のアートであると言うべきであろう。」p.221-229
・「引用したケースについては、名前を伏せ、場所を変え、出来事の日時を書かないように配慮し、個人の同定ができないようにした。こうして、プライバシーと守秘義務の問題をクリアしたいと思った。」p.233 あとがきにて、このように述べているが、「両親殺人事件の女子大生被告M」p.175 などと書かれると、札幌での車ごと埋めたアノ事件しか思い浮かばないわけで・・・ あげくの果てには、「一九八八年夏から八九年夏にかけておこった連続幼女殺人事件の犯人M青年」p.220 なんて出てくるし。
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?しんしん‐こうじゃく【心神耗弱】 心神喪失より程度は軽いが、精神機能の障害により、事の善悪を識別し、また、それによって行動することの著しく困難な状態。民法上では準禁治産の原因となり、刑法上では刑が減軽される。
?しんしん‐そうしつ【心神喪失】 心神耗弱より程度が重く、精神機能の障害により、事の善悪を識別できず、または識別してもそれによって行動することができない状態。民法上では禁治産の原因となり、刑法上では犯罪行為も処罰されない。
・「耗弱」と「喪失」の二つがあったのですね。その区別を初めて知った。
?じゅんしょく【潤色】
1 色どりをつけ光沢を添えること。
2 事実を誇張したり、話を面白く作り変えたりすること。潤飾。「事件を潤色して話す」
3 うるおすこと。めぐみとなること。
?こうこうや【好好爺】 人のいいおやじ。やさしくて気のいい老人。好好翁。
?病跡学(Pathography) 精神的に傑出した歴史的人物の精神医学的伝記やその系統的研究

誤植:p.220  誤「一九八九」 正「一九八八」
コメント (2)
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