ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】ゲノム解読がもたらす未来

2006年02月17日 22時07分08秒 | 読書記録2006
ゲノム解読がもたらす未来, 金子隆一, 洋泉社 新書y027, 2001年
・おそらく、「ヒトゲノム解読完了」のニュースを受け、とにかく早く!とやっつけ仕事で書かれたと思われる遺伝子工学の入門書。
・「われわれはあくまでも、単にヒトゲノムの全塩基配列を読み取ったというだけにすぎない。これは、未知の言語で書かれた文書を解読する場合に例えて言えば、個々のアルファベットの組み合わせによってどのような単語が作られるか、ということが判明した段階にすぎない。」p.17 フムフム・・・
・「ヒトゲノムとは、われわれの肉体を形づくる六〇兆個近い細胞のほぼすべての中(中略)に畳み込まれた、ヒト遺伝子の完全セットである。」p.14 「ゲノムは物理的な実体としては非常に小さい。」p.18 あ、あのう・・・ゲノムはDNAに書き込まれた『情報』そのものを指し、実体をもたない、という理解だったのですが・・・知らないうちにガイドラインが変わったりしたのでしょうか。『ゲノム』『遺伝子』『DNA』の用語がイイ加減に扱われることが多いようです。
・「続いて一九五二年、あの国際ヒトゲノム計画の総帥、ジェームズ・ワトソンは、英ケンブリッジ大学に置かれた最新のX線回折装置を用いて、DNA分子がらせん構造を持つことを発見した。」p.78 あ、あのう・・・ワトソンは、自分でX線の装置使ったわけじゃなく、競争相手だったRosalind Franklinが撮ったX線写真を見て、そこから二重らせん構造のヒントを得たと聞いていますが・・・
・「「バイオインフォーマティクス」、すなわち、ゲノム研究から得られた膨大な情報をいかにして整理し、ネット上で検索しやすいように管理するか、という技術」p.108 あ、あのう・・・データの整理・管理はBioinformaticsのほんの一分野にすぎませんが・・・根本的に取り違えてますよ~
・他にも気がつかない、おかしな記述がたくさんある予感。よっぽどヒドイ本を参考にしたのか?(文献リストないし・・・) 少なくとも専門家のチェックは受けてないようです。こんなテキトーな仕事では『科学ジャーナリスト』の名が泣く。
 と、いうわけで、
『読んではいけない著者リスト』にめでたく追加 >金子隆一
・以下、著者の大胆予測。
・「これは賭けてもいいが、もう数年以内に、DNAシークエンサーの能力はさらに一ケタないしそれ以上向上して、一日一〇〇〇万塩基対のオーダーに乗り、その価格も急速に下がって、ちょっと気の利いた高校の生物実験室にも置かれる程度のものになるだろう。」p.59
・「例えば、近い将来、VIPの周囲には、強力な紫外線ランプなどを手にした専門のゲノム・ガードマンが張りつき、ホテルの部屋にはチリ紙一枚、抜け毛一本も残さないよう徹底的にDNA消毒を施して回る、といった光景がごく普通になるのかもしれない。」p.163
・「おそらく、二一世紀の最初の数年以内に、最初のヒト体細胞クローンは誕生するだろう。そして、ヒト・クローンに対するわれわれの精神的障壁はなし崩しに無くなっていき、特定の条件下ではクローンの製造を認める法案も各国で作られるようになるだろう。(中略)例えば、完全にアンダーグラウンドの世界でアイドル・タレントなどの闇クローンが作られ、マニアに密売される、などといった犯罪がこれから実際に起こる可能性もないとは言い切れないわけである。」p.174
・「おそらく、このペースで話が進めば、二一世紀のかなり早い時期――ひょっとすると二〇一〇年代には、心臓、肝臓、膵臓、腎臓など、需要の大きい主要な臓器はみなレディーメイドのものが市販されるようになるかもしれない。」p.177
・唯一興味を惹かれた記述→「筆者の見るところ、環境との相互作用のあり方という次元において、ヒトの特徴はもっとも際立っているのではないかと思われる。」p.185
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誤植:p.46 誤『一九八六年』 正『一九九六年』  
コメント
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